1984年地下鉄銃撃事件が現代アメリカの分裂を予言していた理由
40年前のニューヨーク地下鉄で起きた白人男性による黒人青年銃撃事件。この事件が現代アメリカの人種対立とポピュリズムの原点をどう形成したかを検証する。
40年前のクリスマス直前、ニューヨーク地下鉄で起きた銃撃事件が、現代アメリカの政治的分裂を予言していた—この事実を知る日本人は少ないだろう。しかし、この事件こそが今日のトランプ現象から1月6日議事堂襲撃まで、アメリカ社会を貫く「正当化された暴力」の原点なのである。
運命の地下鉄2番線で何が起きたのか
1984年12月22日、ニューヨーク地下鉄2番線の車内で、4人の黒人青年が白人男性に銃撃される事件が発生した。被害者はダレル・ケイビー、ジェームズ・ラムサー、バリー・アレン、トロイ・カンティ—全員18歳から19歳の、サウスブロンクスの同じ住宅団地に住む友人同士だった。
加害者はベルニー・ゴーツ、37歳の白人男性。グリニッジビレッジに住む独身の電子機器技術者だった。彼は日常的に違法な38口径のスミス・アンド・ウェッソンを隠し持って地下鉄に乗車していた。
事件の発端は、青年の一人カンティがゴーツに「5ドル持ってない?」と声をかけたことだった。これは当時のニューヨークでは珍しくない、貧困層による小銭稼ぎの物乞いだった。しかしゴーツは立ち上がり、戦闘態勢を取って発砲を開始した。
「もっと弾があれば、何度でも撃っていた」
ゴーツは数秒間で4人全員を撃った。カンティは胸部に、逃げようとしたアレンは背中に被弾。ラムサーは腕から胸部に貫通する銃創を負った。そして座席で身をかがめるケイビーに近づいたゴーツは、「君は大丈夫そうだな。もう一発どうだ」と言い放ち、至近距離から再度発砲した。
後にゴーツは供述で語っている:「もっと弾があれば、何度でも撃っていただろう。問題は弾切れになったことだ」
この銃撃により、ケイビーは脊髄を損傷し腰から下が永久に麻痺した。ラムサーは後に事件の記念日に自殺とみられる死を遂げ、アレンは薬物依存に陥った。青年たちは全員非武装で、最も背の高い者でも身長168センチしかなかった。
メディアが作り上げた「正義の味方」神話
しかし驚くべきことに、ゴーツは犯罪者として非難されるどころか、一夜にして「デス・ウィッシュの自警団」として称賛された。これは当時人気だったチャールズ・ブロンソン主演の映画シリーズを指し、都市の脅威に致命的な力で立ち向かう「普通の白人男性」を描いた作品だった。
この世論形成に決定的な役割を果たしたのが、ルパート・マードックが所有するニューヨーク・ポスト紙だった。マードックはこの事件を、ニューヨークのタブロイド市場を支配し、全米メディア市場を制覇する絶好の機会と捉えた。
ポスト紙とライバルのデイリーニュース紙は、事件を「殺人未遂」ではなく「正当防衛」の問題として報道した。ICUに運ばれたのは青年たちで、違法な武器を携帯していたのはゴーツだったにもかかわらず、青年たちが「捕食者」、ゴーツが「獲物」として描かれた。
レーガン革命が生んだ「下向きの怒り」
この世論の背景には、1980年に始まったレーガン革命があった。ロナルド・レーガン政権は、政府は肥大化し非効率で、リベラルな社会保障制度は依存と犯罪を生むだけだと主張した。そして法を守る市民(暗黙的に白人)が、怠惰な「アンダークラス」(明示的に黒人とされることが多い)のために見捨てられてきたと訴えた。
レーガン共和党の解決策は、連邦支出の削減、減税、企業規制の緩和だった。富裕層が繁栄すれば、その恩恵は国民全体に「トリクルダウン」するという理論だった。
しかし政治的には、50年以上にわたって構築された公的セーフティネットを解体することはリスクが高かった。そこでレーガン政権が採用したのが、巧妙な戦略だった:社会保障制度から予算を削り取り、その必然的な失敗を指摘してリベラル政策を否定するのである。
レーガン政権の補佐官ジェームズ・チッコーニは内部メモで説明している:「政府資源の減少」の時代により、「リベラルなアプローチ」は「財政的に維持不可能」になり、「代替案」の採用を余儀なくされると。
「正当化された暴力」の文化的基盤
1980年代を通じて、この意図的な制度崩壊は、国の問題がリベラルな社会・政治・人種政策と、働く意欲のない人々の道徳的失敗から生まれているという証拠として再構築された。不平等は能力主義として正当化された。
税金が削減され規制が撤廃される一方で、一般のアメリカ人が依存する社会保障制度と都市サービスは壊滅的な打撃を受けた。富裕層がより豊かになり、一般人の生活がより困難になる中、ホワイトハウスから流れる物語は、深刻化する危機—ホームレスの増加、AIDS流行、ゴミだらけの街路、違法経済への転換—を政策選択ではなく「悪い人々」のせいにし続けた。
特に白人アメリカ人には、レーガン時代の「ファウスト的取引」が提示された:薄いセーフティネット、より厳しい経済、より不平等な社会を受け入れる代わりに、拡大し続ける刑事司法制度によって「正しい人々」が処罰されるのを見る感情的満足と、もし自分と似ていない誰かに不満をぶつけても、同じ制度が自分を守ってくれるという暗黙の保証を得るのである。
司法制度が送ったメッセージ
ゴーツの司法処理は、この世界観に正当性を与えた。最初の大陪審は、異例の世論の圧力にもかかわらず殺人未遂罪での起訴を見送った。しかし、ゴーツが青年たちを銃撃したことを自白し、「強盗は関係ない」と述べ、ケイビーに2度目の発砲をしたことを認めたことが明らかになると、2回目の大陪審が招集され、殺人未遂を含む重大な罪で起訴した。
しかし裁判では、積み上げられた証拠にもかかわらず、陪審団はゴーツを最も軽微な銃器所持罪でのみ有罪とした。ゴーツはわずか8カ月の服役で済んだ。アメリカ国民に送られたメッセージは明確だった:少なくとも一部の人々が自分で正義を執行することは完全に許される。
現代への長い影響
ゴーツ事件は、保守系タブロイドメディアと煽情的なトークラジオの初期構造を構築する助けとなった。これがソーシャルメディアとフォックスニュースの報道エコシステムの種となり、バイラルな怒りと政治目的での経済不安の動員術を完成させた。
この経済的・文化的変革は決して保守政治家だけの事業ではなかった。党派を超えた政治家たちが、アメリカの社会的セーフティネットの着実な解体と怒りと憤りの煽動に貢献し、同時にこれらを自分たちの党派的目的のために利用しようと働いた。ビル・クリントンは福祉制度に最も壊滅的な打撃を与え、ドナルド・トランプは恐怖を怒りに変える技術を完成させた。
州境を越えて突撃銃を持った十代の少年が抗議者を殺害し愛国者として称賛される。暴徒が議事堂を襲撃し、民主主義を「救う」ために暴力が必要だと確信して恩赦を受ける。ICE職員が母親を射殺し、すべての証拠に反して正当防衛だったとされる—これらすべてが、長いレーガン革命の継続なのである。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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