イラン核問題の矛盾:「完全破壊」と「1週間で核兵器製造可能」
米政府高官の相反する発言が浮き彫りにするイラン核問題の複雑さ。外交と軍事力の狭間で揺れる中東情勢を読み解く。
「1週間」。この数字が、アメリカの対イラン政策の矛盾を端的に表している。
トランプ政権の中東特使スティーブ・ウィトコフ氏が週末に発した警告は衝撃的だった。「イランは恐らく1週間以内に、工業レベルの爆弾製造材料を手に入れることができる」。しかし、わずか3日後の火曜日、カロライン・レビット報道官は記者団に対し、昨年6月の「ミッドナイト・ハンマー作戦」がイランの核施設を「完全に破壊した」と断言した。
相反する評価が示す現実
8か月前の攻撃について、米政府内でこれほど異なる評価が並存することは異例だ。レビット報道官は作戦の成功をトランプ大統領と国際原子力機関(IAEA)が「検証済み」と主張したが、実際にはIAEAの査察官は攻撃以降、イランの核施設にアクセスできていない。
ラファエル・グロッシIAEA事務局長は攻撃直後、イランが「数か月以内」にウラン濃縮を再開できると警告していた。国防総省の公式評価でも、イランの核開発は「1~2年」遅延したに過ぎないとされている。
一方で、イランが核開発を再開したという公式確認はない。それでもウィトコフ特使の発言は、水面下で進行する可能性のある核開発への懸念を反映している。
外交と軍事力の綱渡り
興味深いのは、こうした警告と同時進行で、米国とイランが今年3回目の核合意交渉を準備していることだ。イランは経済制裁解除と引き換えに、厳格なIAEA監督下での「最小限のウラン濃縮」に同意する姿勢を示している。
しかし、トランプ大統領は「ゼロ濃縮」を要求し続けている。攻撃前のイランは60%の純度でウラン濃縮を行っていたが、核兵器製造には約90%が必要とされる。この技術的な閾値こそが、外交交渉の核心となっている。
昨年12月のネタニヤフ首相訪米後、トランプ大統領はイランが核・ミサイル開発を再開すれば再攻撃すると警告。米軍はイラン周辺に軍事資産を集結させ、緊張は高まり続けている。
日本への含意
日本にとって、この中東の不安定化は複数の側面で影響を及ぼす。まず、ホルムズ海峡を通る石油輸送への懸念だ。日本の原油輸入の約9割が中東に依存する現状で、軍事衝突は直接的な経済打撃となる。
加えて、核不拡散体制への影響も深刻だ。日本は唯一の被爆国として核廃絶を訴え続けてきたが、イランの核開発は地域の軍拡競争を誘発しかねない。サウジアラビアやトルコも核開発を検討する可能性があり、NPT体制の根幹が揺らぐ恐れがある。
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