ICEによる拘束を恐れ、裁判所に出廷しない移民たち―米国の法的手続きが直面するジレンマ
米国の移民が、移民・関税執行局(ICE)による拘束を恐れて裁判への出廷を回避するジレンマに直面。法的手続きの信頼性が揺らぎ、司法制度そのものが機能不全に陥るリスクを解説します。
米国内で合法的な滞在資格の取得を目指す移民たちが、「出廷すれば拘束され、出廷しなければ強制送還される」という深刻なジレンマに直面しています。米移民・関税執行局(ICE)による逮捕を恐れ、長年待ち望んだ裁判期日に姿を現さないケースが増えていると、メディア「Boing Boing」が報じました。この現象は、米国の移民法制度における信頼の揺らぎを浮き彫りにしています。
米国の移民裁判は、亡命申請や強制送還の可否などを決定する重要な法的手続きです。しかし、移民の摘発・拘束・送還を担う連邦機関であるICEが、裁判所やその周辺で対象者を拘束する事例が報告されるようになり、移民やその支援者の間で恐怖が広がっています。本来、法的な保護を求める場であるはずの裁判所が、逆に「罠」と見なされ始めているのです。
移民側の弁護士や人権団体は、「裁判所への出頭は、自らの主張を述べるための唯一の機会だが、その場でICEに身柄を拘束されるリスクは無視できない」と指摘します。この恐怖心から出廷を回避する移民は少なくありません。しかし、裁判を欠席した場合、裁判官は被告人不在のまま強制送還命令を出すことが一般的です。つまり、移民たちは法的手続きに参加する権利を行使すること自体をためらわざるを得ない状況に追い込まれています。
一方で、国土安全保障省(DHS)は公式には、裁判所を学校や病院と同様に「センシティブな場所」と位置づけ、ICEによる捜査活動を原則として制限する方針を示しています。しかし、移民支援団体によれば、この方針は必ずしも現場で遵守されておらず、裁判所周辺での逮捕が移民コミュニティに与える萎縮効果は大きいとされています。どちらの選択肢も厳しい結果につながる可能性があり、多くの移民が袋小路に陥っているのが現状です。
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