家庭用ゲーム機戦争に敗北か?マイクロソフトXbox、ハード中心からクラウド戦略へ大転換
家庭用ゲーム機戦争でソニーや任天堂に大差をつけられたマイクロソフトXbox。CNBCの報道によると、同社はハードウェア中心戦略を放棄し、クラウドサービス「Game Pass」を核としたオープンなエコシステムへの歴史的転換を進めている。
核心ポイント
- マイクロソフトのXboxは、任天堂やソニーとの家庭用ゲーム機販売競争で長年苦戦。最新の販売データでは、その差はさらに開いている。
- CNBCの報道によると、販売不振を受け、マイクロソフトはハードウェア中心の戦略から、PCやクラウドを融合させたオープンなエコシステムへの転換を加速させている。
- この新戦略の核となるのが、ゲームのサブスクリプションサービス「Game Pass」。同社はコンテンツ強化のため、近年巨額のスタジオ買収を敢行してきた。
マイクロソフトの家庭用ゲーム機「Xbox」が、重大な岐路に立たされている。ソニーのPlayStation 5や任天堂のSwitchシリーズとの販売競争で大きく後れを取り、CNBCの報道によれば、同社はハードウェアで競う従来路線を捨て、クラウドとソフトウェアを軸にしたオープンなプラットフォーム戦略へと大きく舵を切っている。
数字が物語る苦境
最新のデータは、Xboxの厳しい状況を浮き彫りにしている。マイクロソフトの2026年度第1四半期決算によると、ゲーム部門全体の収益は前年同期比で2%減少。特にXboxハードウェアの売上は29%もの大幅な落ち込みを見せた。
調査会社CircanaのデータとしてIGNが報じたところでは、年間で最も重要な商戦期である11月の販売台数は、Xbox Seriesシリーズが前年比で70%という劇的な減少を記録。これはPlayStation 5(40%以上の減少)やSwitchシリーズ(10%以上の減少)を大きく上回る不振であり、家庭用ゲーム機市場全体にとっても過去20年で最悪の11月となった。
ゲーム販売追跡サイトVGChartzの推計によると、2025年の累計販売台数は、任天堂Switch 2が1,036万台、ソニーPlayStation 5が920万台であるのに対し、Xbox Series S/Xはわずか170万台。2017年に発売された初代Switch(今年340万台販売)にすら及ばない状況だ。マイクロソフトは2015年以降、Xboxの販売台数の公表を停止している。
「ポスト・コンソール」時代への布石
しかし、マイクロソフト自身はこの状況を悲観していないようだ。同社のゲーム部門CEOであるフィル・スペンサー氏は2023年のポッドキャストで、「我々のビジネスは、ソニーや任天堂のコンソール販売台数を上回ることではない」と語っている。
この発言は、同社の戦略転換を象徴するものだ。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、「コンソールからテレビ、モバイルまで、あらゆるプラットフォームに存在すること」を目指すとし、次世代XboxがよりPCのように機能する可能性を示唆した。Xboxプレジデントのサラ・ボンド氏もCNBCの取材に対し、次世代機はプレイヤーがコンソール、PC、クラウドゲームを自由に行き来できる「オープンなシステム」を目指していると語った。
成長エンジンとしての「Game Pass」
この新戦略の心臓部となるのが、月額制のゲーム遊び放題サービス「Xbox Game Pass」だ。マイクロソフトは、コンソールを持たないユーザーも含め、世界に20億人以上いるとされるゲーマー全体を市場と捉えている。
このアプローチは着実に成果を上げており、2024年にはGame Passの加入者数が過去最高の3,400万人を記録。昨会計年度の総収益は約50億ドルに達した。加入者によるクラウドゲーミングのプレイ時間も前年比で45%増加しており、クラウドへの移行が加速していることを示している。同社はさらにユーザー層を拡大するため、広告付きの無料プランもテスト中と報じられている。
コンテンツ帝国による包囲網
Game Passの魅力を高めるため、マイクロソフトはコンテンツ 확보に巨額の投資を行ってきた。2020年には「The Elder Scrolls」シリーズで知られるベセスダの親会社ZeniMaxを81億ドルで、さらに2023年には「Call of Duty」などを手掛けるアクティビジョン・ブリザードを754億ドルで買収した。
潤沢なコンテンツを武器に、同社はこれまで業界の常識だった「独占タイトル」戦略からも距離を置き始めている。ボンド氏は最近のインタビューで、独占という考え方は「時代遅れ」だと述べ、今後はより多くのゲームを複数のプラットフォームで展開していく方針を示した。
PRISMインサイト:これは「敗北宣言」ではなく「戦場の変更」だ
マイクロソフトの動きは、単なる劣勢からの撤退ではない。これは、同社が最も得意とするクラウドとソフトウェアの土俵に、ゲーム業界全体を引き込もうとする壮大な戦略転換である。ハードウェアの販売台数という古い指標から、月額課金者数やエンゲージメントといったサービス業の指標へと、成功の定義そのものを変えようとしている。投資家は、マイクロソフトがコンソールメーカーから、ゲーム界の「ネットフリックス」へと真の変貌を遂げられるかどうかに注目すべきだろう。
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