トランプ大統領のアカウントが投稿した「類人猿動画」が映す、アメリカの深い分断
トランプ大統領のSNSアカウントがオバマ元大統領夫妻を類人猿として描いた動画を投稿。12時間後に削除されたが、その背景にある人種差別の歴史と現代への影響を考える。
12時間。トランプ大統領のTruth Socialアカウントに投稿されたある動画が、削除されるまでにかかった時間です。その動画には、オバマ元大統領夫妻の顔が類人猿の体に合成され、「ライオンは眠っている」の音楽に合わせて踊る姿が映されていました。
何が起きたのか
2月5日深夜11時44分、トランプ大統領のTruth Socialアカウントに問題の動画が投稿されました。動画は画面録画の形式で、最初の1分間は2020年大統領選挙で投票機の不正操作があったという虚偽の主張を含む内容でした。その後、画面がスワイプされ、オバマ元大統領夫妻を類人猿として描いた場面が一瞬映し出されます。
ホワイトハウスの匿名の職員は「職員が誤って投稿した」と説明しましたが、動画は2回投稿され、削除されるまでに数百から数千の反応を集めました。投稿直後にはAPEBAMAという暗号通貨も作られ、12時間で400万ドル以上の取引が行われました。
歴史が示す危険なメッセージ
この「ジョーク」は決して軽いものではありません。黒人を白人と類人猿の中間に位置づける考え方は、長年にわたって残酷な行為を正当化するために使われてきました。
1377年、ある歴史家はアフリカ人について「動物のような属性を持つため、奴隷制に従順である」と記録しました。南北戦争時代には、本を逆さまに持つ猿を「ニグロマン」と表記した風刺画が流通。1906年には、当時のベルギー領コンゴ出身のオタ・ベンガという男性が、ブロンクス動物園でオランウータンと一緒に檻に入れられて展示されました。
1975年、ボストンの公立学校で人種統合を進める黒人学生に対し、白人の若者たちが「2、4、6、8、黒人猿を暗殺しろ」と叫んだ記録も残っています。
現代への影響と反応
動画の作成者とされる@xerias_xは、X(旧Twitter)に完全版を投稿し、100万回以上の再生を記録しました。この動画では、オバマ夫妻以外にも民主党の政治家たちが動物として描かれ、ライオンとして登場するトランプ氏にひれ伏す様子が描かれています。
カロライン・レビット報道官は当初、「これはトランプ大統領をジャングルの王として、民主党をライオンキングのキャラクターとして描いたインターネット・ミーム動画です」と擁護しました。しかし、ライオンキングには猿のラフィキは登場しますが、類人猿は出てきません。
日本から見た視点
日本の読者にとって、この事件は単なるアメリカの内政問題を超えた意味を持ちます。トランプ政権は最近、アフリカ系移民のビザ申請者の90%近くを禁止する規則を発表しました。また、ソマリア人を「低IQ」と呼ぶなど、人種差別的な発言を繰り返してきた経緯があります。
日本企業にとっても、アメリカの社会分断の深刻化は無視できない問題です。多様性と包摂性を重視するグローバル企業の価値観と、こうした排他的な動きとの間で、どのような立場を取るべきかという課題が浮上しています。
記者
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