最強軍隊の「棚卸し」——米国が直面する戦力の現実
ペルシャ湾での対イラン軍事作戦が明らかにした米軍の強みと深刻な弱点。F-35の無敵神話の裏で、弾薬備蓄の枯渇と艦艇不足が露わになった。日本の安全保障にも直結する問題を多角的に分析する。
1機も撃墜されなかった。それは確かに事実だ。しかし、その輝かしい戦果の陰で、アメリカは自国の軍事力について不都合な真実と向き合っている。
ペルシャ湾での対イラン軍事作戦が約1ヶ月を経過した2026年3月現在、米国防当局と安全保障専門家の間で、ある種の「棚卸し」が静かに始まっている。英国の歴史家コレリ・バーネットが1986年に著した『戦争の会計』——第二次世界大戦における英国の産業パフォーマンスを厳しく評価した書——になぞらえるならば、今まさにアメリカは自国の「戦争の会計」を突きつけられているのだ。
疑いようのない強さ——F-35とアメリカの技術優位
評価の公正を期すために、まず「強み」から見ていこう。
今回の作戦において、米国とイスラエルが運用したF-35戦闘爆撃機は1機の損失も出さなかった。これは単なる幸運ではない。F-35は爆撃機である以前に、空飛ぶコンピューターであり、センサーの塊だ。他の航空機との高度な情報共有、脅威の自動識別、そしてステルス性能——これらが組み合わさって、従来の防空システムを無力化した。B-2爆撃機も同様に、その能力を遺憾なく発揮した。
情報収集・分析の面でも、衛星画像や通信傍受を中心とした米国のインテリジェンス能力は際立っていた。統合参謀本部議長のダン・ケイン大将と中央軍司令官のブラッド・クーパー提督は、明晰さと冷静さで作戦を指揮した。最前線で航空機を操縦し、整備し、防衛に当たる若い兵士たちの練度と精神力も高く評価されている。
これだけ見れば、アメリカ軍は依然として世界最強の軍事力を持つ、という結論になる。だが、数字はそれほど単純ではない。
「棚卸し」が明かした欠乏——弾薬、艦艇、機雷対策
問題は「今回の戦争に勝てるか」ではなく、「次の、もっと大きな戦争に耐えられるか」だ。
まず弾薬備蓄の問題がある。2025年の中東紛争において、陸軍の高高度迎撃ミサイルTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)の備蓄の約4分の1が消費されたと推計されている。今回の作戦でも同規模の消費が生じた可能性がある。さらに多くの精密誘導兵器が、2026会計年度に予定されていた年間補充量を上回るペースで消耗している。
より深刻なのは海軍力の変容だ。1980年代のイランとの前回の緊張局面では、米海軍はペルシャ湾に30隻の戦闘艦を展開していた。今回は湾外にわずか12隻程度しかいない。1986年当時、米海軍は巡洋艦・駆逐艦・フリゲートを合わせて214隻の水上戦闘艦を保有していた。2026年の今日、その数は半分以下だ。
フリゲート艦の消滅は特に象徴的だ。1986年には113隻存在したフリゲート艦は今やゼロ。その代替として導入されたはずの沿海域戦闘艦(LCS)は、機械的な信頼性の低さ、高脅威環境への不適合、主要任務への不向きという三重苦を抱えている。イタリア設計のフリゲート艦による代替計画も、改修費用の膨張によって頓挫した。
機雷対処能力の欠如も深刻だ。1986年に21隻あった機雷戦艦艇は今や4隻、しかも退役間近だ。皮肉なことに、米海軍がイランの機雷に最初に直面したのは約40年前のペルシャ湾でのことだった。同じ脅威への備えが、40年を経てむしろ後退しているのである。
なぜこうなったのか——「質vs量」という根本的な選択
これらの欠陥は、トランプ政権だけの責任ではない。根はもっと深い。
冷戦終結後の「平和の幻想」が防衛産業基盤の意図的な縮小を招いた。しかしより本質的な問題は、アメリカが長年にわたって「量より質」という哲学を軍事戦略の中核に据えてきたことだ。
これは第二次世界大戦初期にも似た現象が起きていた。海軍は大型の艦隊駆逐艦の建造を好んだ結果、ドイツのUボート対策に必要な護衛艦が不足した。海軍作戦部長だったアーネスト・キング元帥でさえ、「海軍がUボートに対処する十分な手段を得たのは1943年後半だった」と認めている。解決策は小型・低速・廉価で建造が早い駆逐護衛艦へのシフトであり、戦時中に500隻以上が建造された。
もう一つの根本的な仮定は、「アメリカは攻撃側であり、防御は必要最小限でよい」というものだ。カタールのアル・ウデイド空軍基地では、数十億ドルの航空機が翼を接するように並んで駐機しているという——1941年12月7日のフィリピン・クラーク基地と同じように。そして「短期・低死傷者」の戦争という第三の仮定が、大量消耗への備えを不要なものとしてきた。
日本の安全保障への示唆
ここで日本の読者が考えるべき問いがある。
日本は日米安全保障条約のもと、有事における米軍の関与を前提とした安全保障体制を構築してきた。しかし今回の「棚卸し」が示したのは、その米軍が弾薬備蓄の枯渇、艦艇数の減少、そして特定の脅威(ドランによる精密攻撃など)への脆弱性を抱えているという現実だ。
日本政府は2022年の安全保障関連3文書改定以来、防衛費の*GDP比2%への引き上げと反撃能力の保有を進めている。しかし問題は予算の規模だけではない。今回の作戦で露わになったのは、「何を、どれだけ備蓄するか」という具体的な戦略の重要性だ。三菱重工や川崎重工などの防衛産業が担う国内生産能力の拡充と、同盟国との弾薬融通体制の整備——これらは「次の危機」が来る前に答えを出しておかなければならない問いだ。
インド太平洋地域において、中国人民解放軍は冷戦期のソ連海軍をも凌ぐ脅威になりつつあるという評価がある。今回のペルシャ湾での作戦が「比較的限定的な相手」との戦いだったとすれば、より能力の高い相手との戦いは「はるかに、はるかに痛みを伴うものになりうる」と専門家は警告する。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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