トランプのFRB人事が示す「政治と金融の新境界線」
トランプ大統領がケビン・ワーシュ氏をFRB議長に指名。テック株急落と政府閉鎖危機の中で、金融政策の独立性はどう変わるのか。
3500億ドル。Microsoftの株価が一日で失った時価総額だ。同じ日、トランプ大統領は次期FRB議長にケビン・ワーシュ元理事の指名を発表した。偶然の一致だろうか?
「ケビン」の中から選ばれた男
トランプ大統領は1月30日朝、自身のソーシャルメディアでケビン・ワーシュ氏をFRB議長に指名すると発表した。「彼を長い間知っているが、史上最高のFRB議長の一人、いや最高になることは間違いない」との言葉を添えて。
候補者は皆「ケビン」だった。国家経済会議のディレクターケビン・ハセット氏、現FRB理事のクリストファー・ウォーラー氏、BlackRockのリック・リーダー氏らが最終候補に残っていたが、結局は元FRB理事の経験を持つワーシュ氏に軍配が上がった。
ワーシュ氏は昨日ホワイトハウスにいたと政権関係者がCNBCに明かしている。中央銀行での豊富な経験と、政治的独立性を保つだろうというウォール街の期待から、市場を大きく動揺させる人事ではないとの見方が強い。
テック株の「ソフトウェア危機」
人事発表と同じタイミングで、テック業界では深刻な調整が進んでいる。ソフトウェア関連ETF(IVG)は昨日、4月以来最悪の下落を記録。直近高値から22%下落し、正式に弱気相場入りした。
Microsoftの急落は10%に達し、2020年以来最悪の一日となった。決算は予想を上回ったものの、クラウド成長の鈍化と営業利益率の弱い見通しが投資家を失望させた。ServiceNowも同様に10%下落。AI技術がソフトウェア業界をどう破壊するかという懸念が、好調な決算結果を帳消しにした。
興味深いのは、かつてウォール街の寵児だったソフトウェア業界が、2008年以来最大の月間下落率を記録していることだ。技術革新のスピードが、その恩恵を受けてきた企業自身を脅かし始めている。
政治と経済の綱渡り
ワーシュ氏の指名承認は、共和党のトム・ティリス上院議員が現ジェローム・パウエル議長への刑事捜査が終了するまでFRB人事を阻止すると宣言していることで、簡単ではない。政治的思惑が金融政策人事に影響を与える構図が鮮明になっている。
一方で、トランプ大統領は政府閉鎖を避けるための上院合意案を支持すると表明。ただし、国土安全保障省は2週間のつなぎ予算となり、移民政策を巡る対立の深さを物語っている。
日本への波及効果
Appleは決算で予想を上回る業績を発表し、ティム・クックCEOはiPhoneの需要を「驚異的」と表現した。iPhone売上は前年同期比23%増となったが、チップ不足がなければさらに好調だったとも明かした。
日本の半導体関連企業にとって、この需要増は追い風となる可能性がある。ソニーのイメージセンサーや村田製作所の電子部品など、iPhone供給網に組み込まれた日本企業への恩恵は大きい。
AmazonとOpenAIの間で500億ドル規模の投資協議が進んでいるとの報道も、AI分野での競争激化を示している。日本企業がこの波にどう乗るか、戦略の見直しが迫られている。
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