ASEAN分裂の兆し:タイがミャンマー軍事政権との対話を主導
タイがミャンマー軍事政権との関係正常化を図る中、ASEAN内部で異なるアプローチが浮き彫りに。日本の東南アジア外交への影響を分析。
2,400キロメートルの国境を共有するタイが、ミャンマー軍事政権との関係修復に向けて大胆な一歩を踏み出した。
タイの「橋渡し外交」が始動
2月18日、プーケットで開催された会談で、シハサック・プアンケートケーオタイ外相は、ミャンマー軍事政権のタン・スウェ外相と直接対話を行った。シハサック外相は記者団に対し、「タイはミャンマーをASEANに戻すための橋渡し役になりたい」と明言した。
この発言は、2021年の軍事クーデター以降、ミャンマーの軍事指導者をハイレベル会合から排除してきたASEANの方針に、微妙な変化をもたらす可能性がある。タイは軍事政権に対し、ASEAN5項目合意の実施を促すとともに、民主化勢力や少数民族武装組織との対話プロセス開始を求めた。
現実主義vs理想主義の対立
タイのアプローチは実用主義に基づいている。シハサック外相は「選挙を受け入れたとは言っていないが、選挙が行われたという現実がある」と述べ、現状を受け入れながらも段階的な改善を目指す姿勢を示した。
一方で、この姿勢は国際社会の厳しい視線にさらされている。ミャンマー軍事政権が実施した3段階選挙(12月28日、1月11日、1月25日)は、軍事政権寄りの統一団結発展党(USDP)が1,025議席中739議席を獲得する結果となったが、国際社会からは「茶番劇」として広く非難されている。
ASEANの結束に亀裂
タイの独自外交は、ASEAN内部の足並みの乱れを浮き彫りにしている。現在ASEAN議長国を務めるフィリピンのテレサ・ラザロ外相も、ミャンマー問題の特使として活動しているが、タイとの連携は不透明だ。
ラザロ外相は先月セブで開催されたASEAN外相会議で、選挙結果について「何か前向きなものかもしれない」と慎重ながらも期待を示した。しかし、ASEAN全体としては選挙結果の公式承認には至っていない。
国境を越える現実的課題
タイの積極的な関与の背景には、切実な現実がある。両国間の2,400キロメートルを超える長大な国境では、オンライン詐欺や違法薬物製造といった国境を越えた犯罪が深刻化している。昨日の会談でも、両外相はこれらの問題への対策強化について協議した。
また、ミャンマーの内戦激化により、難民流入や経済的影響もタイにとって無視できない問題となっている。2024年末にはバンコクで「非公式協議」を主催し、ミャンマー軍事政権と近隣5カ国(ラオス、中国、インド、バングラデシュ、タイ)の代表が参加する場を設けるなど、タイは独自の外交チャンネルを構築してきた。
4月の新政府発足を見据えて
ミャンマーでは4月に新たな「文民」政府が発足予定だが、実質的には軍事政権の延長線上にあるとの見方が支配的だ。それでも、タイは現実的なアプローチを通じて、段階的な改善を模索する方針を堅持している。
「我々が彼らを助けるためには、彼らも我々を助ける必要がある」とシハサック外相が述べたように、相互利益に基づいた関係構築を目指している。
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