タイ総選挙、保守と革新の分裂で連立協議が長期化か
タイ総選挙で人民党、ブムジャイタイ党、プアタイ党が僅差の争い。保守・革新の分裂で政治的不安定が続く可能性が高まっている。
54.7%のタイ国民が軍事政権下で制定された現行憲法の改正を求めている。この数字は、2月8日に実施されたタイ総選挙と同時に行われた国民投票の暫定結果だが、タイ社会の深い分裂を物語っている。
選挙開票が進む中、革新系の人民党が比例代表で21%を獲得してリードし、保守系のブムジャイタイ党が17%、中道のプアタイ党が16%で続く僅差の戦いとなっている。しかし、この接戦こそが、タイの政治的不安定を長期化させる要因となりそうだ。
政権交代への高いハードル
今回の選挙は、昨年9月に就任したアヌティン・チャーンウィーラクン首相の保守政権に対する信任投票の性格を持つ。同首相はブムジャイタイ党を率い、愛国主義的な政策を掲げて支持基盤の結束を図ってきた。
一方、最大野党の人民党は、2023年に解散させられた前進党の後継政党として、憲法改正や軍部の政治関与排除を訴えている。バンコクでは33選挙区すべてで優勢とされ、都市部での支持拡大が続いている。
プアタイ党は、元首相タクシン・シナワトラ氏の甥であるヨッチャナン・ウォンサワット氏を首相候補に擁立。2023年から2025年まで政権を担った経験を武器に、政治的安定を訴えている。
連立形成の複雑な方程式
下院500議席のうち過半数の251議席を確保するには、複数政党による連立が不可欠だ。しかし、各党の政治的立場の違いは深刻で、安定した政権運営への道筋は見えていない。
人民党とプアタイ党は憲法改正では歩調を合わせる可能性があるが、経済政策や軍部との関係では温度差がある。一方、現職のアヌティン首相は、米国の関税政策や外国人観光客減少、カンボジアとの国境緊張など、内外の課題への対応力をアピールしている。
タイの政治制度では、選挙管理委員会が最終結果を確定させるまで60日間の猶予がある。その後15日以内に新議会が招集され、首相選出が行われる予定だが、連立協議は既に今夜から始まるとみられている。
東南アジア地域への波及効果
タイの政治的安定は、東南アジア全体の経済・安全保障に大きな影響を与える。同国はASEANの中核国として、地域統合の推進役を担ってきた。政権の長期化が困難になれば、南シナ海問題やミャンマー情勢への対応にも支障をきたす可能性がある。
日本企業にとっても、タイは重要な生産拠点だ。トヨタやホンダなどの自動車メーカー、ソニーやパナソニックなどの電機メーカーが大規模な投資を行っている。政治的不安定が続けば、これらの企業の事業計画にも影響が及ぶかもしれない。
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