テスラ、EV販売低迷で「AI企業」転換へ本格投資
テスラがEV販売不振を受け、2026年にAI・ロボット事業に200億ドル投資。xAIとの統合も視野に入れた戦略転換の真意とは?
テスラの2025年売上高948億ドルのうち、695億ドルがEV販売から生まれている。残り250億ドルは太陽光発電とスーパーチャージャーなどのサービスだ。数字が物語るのは、イーロン・マスクがいくら「AI・ロボティクス企業」と呼んでも、テスラは依然としてEVメーカーだという現実である。
その現実が、同社を厳しい選択に追い込んでいる。EV市場の減速とともに、テスラの2025年利益は前年比46%減少。この状況を打開するため、マスクは2026年を「巨大な設備投資年」と位置づけ、支出を200億ドルへと倍増させる計画を発表した。これにより、テスラはマイナスキャッシュフロー領域に突入することになる。
象徴的な終焉と新たな始まり
テスラはモデルSとモデルXの生産終了を発表した。両モデルの売上はテスラ全体の約2%に過ぎないため、財務的影響は限定的だ。しかし、2012年のモデルS発売が自動車業界を永遠に変えたことを考えると、これは一つの時代の終わりを象徴している。
空いた生産ラインには、オプティマスヒューマノイドロボットの製造が予定されている。カリフォルニア州フリーモント工場で生産される予定だが、これまでの試作品レベルから量産へのスケールアップは容易ではない。日本の製造業が長年培ってきた精密組み立て技術との競争も待っている。
xAIとの統合が示す新戦略
最も注目すべきは、テスラがxAIへの20億ドル投資を計画していることだ。これは単なる投資を超え、マスクの企業群を統合する「円形経済」の一環と位置づけられている。実際、SpaceX、テスラ、xAIの3社統合に向けた協議が進行中との報道もある。
しかし、この戦略には疑問も残る。AIチップ不足を理由に「TerraFab工場」建設まで検討しているが、半導体製造はTSMCやソニーなど既存プレイヤーが圧倒的な優位性を持つ分野だ。テスラが本当に競争力を持てるのだろうか。
ロボタクシー事業の現実
一方、テスラのロボタクシー事業拡大計画も発表された。しかし、Waymoが150億ドルの資金調達を進め、サンフランシスコ国際空港でのサービスも開始する中、テスラの完全自動運転技術はまだ安全運転者が必要なレベルにとどまっている。
興味深いのは、自動運転トラック企業WaabiがUberから10億ドルを調達し、25,000台のロボタクシー展開を計画していることだ。テスラ以外の企業が着実に実用化を進める中、テスラの優位性は本当に維持できるのか。
日本市場への示唆
日本ではトヨタが「マルチパスウェイ」戦略で電動化を進める一方、テスラのような急進的転換は見られない。しかし、テスラの戦略変更は日本の自動車メーカーにとって重要な示唆を含んでいる。
特に、AIとロボティクス技術の統合は、ソニーやソフトバンクなど日本企業が強みを持つ分野だ。テスラの試行錯誤から学び、より堅実なアプローチで市場参入する機会があるかもしれない。
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