スウェーデンが核の傘を再考する理由
平和主義国家スウェーデンが、なぜ今になって核抑止力について議論し始めたのか。アメリカへの信頼失墜が欧州の安全保障観を根本から変えている。
210年間戦争をしていない国が、核兵器について真剣に議論している。スウェーデンのウルフ・クリステション首相が先月、英仏両国との核協議について公然と語ったのだ。
平和主義国家の変化
スウェーデンは1814年以来戦闘に参加せず、二度の世界大戦でも中立を維持してきた。1970年代から80年代にかけては、欧州で最も強力な反核運動の拠点でもあった。そんな国がNATOに加盟したのは、わずか2年前のことだ。
「私たちはNATOの核計画においては新参者です」とクリステション首相は語る。「しかし、その計画を非常に、非常に真剣に受け止めています」
この変化の背景には、第二次世界大戦後にスウェーデンが歩んだ複雑な道のりがある。実は同国は戦後、ソ連侵攻への恐れから核兵器開発を開始していた。1957年、CIAはスウェーデンが「今後5年以内に核兵器を製造できる十分に発達した原子炉プログラムを持っている」と評価した。
しかしアメリカの圧力と核の傘の保証により、スウェーデンは1968年に核不拡散条約に署名し、1972年にプルトニウム研究所を閉鎖した。アメリカへの信頼が、自国の核武装を諦めさせたのだ。
信頼の損失
その信頼が今、揺らいでいる。ドイツ人は「Vertrauensverlust(信頼の失失)」、スウェーデン人は「förtroendeskadligt(信頼を損なう)」という言葉を使う。
「私たちは別れたわけではありませんが、注意深く見守り、耳を傾けています。突然驚かされる可能性があることを認識しており、それは好ましくありません」とクリステション首相は説明する。
トランプ政権が同盟国を威嚇し、主権領土の奪取まで脅すなか、アメリカのコミットメントは価値を失いつつある。同時に、核武装したロシアが隣国を飲み込もうとしている現実がある。
欧州の核協力
昨夏、イギリスとフランスの首脳は初めて核計画の協調を表明し、欧州が極度の脅威にさらされた場合の共同対応を誓った。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相も、マクロン仏大統領と欧州集団核抑止の可能性について協議していることを明かした。
スウェーデンも「英仏両国との継続的な議論」を進めている。イギリスの核戦力はNATOの核計画に統合されているが、フランスのそれは統合されていない。「まだ正確ではありませんし、フランス人は独特のフランス人ですが、フランスも他国との議論に開放性を示しています」
日本への示唆
興味深いのは、ウクライナの事例だ。同国はソ連崩壊後に継承した核兵器を、ロシアやアメリカなどからの安全保障と引き換えに放棄した。その保証は結局、空約束に終わった。
日本もまた、アメリカの核の傘に依存している。しかし、その傘の信頼性に疑問符がつく時代において、日本はどのような選択肢を持つのだろうか。韓国では既に独自核武装論が台頭している。
クリステション首相は現在、自国製核兵器については否定的だが、「永遠に排除できるか?もちろんできません」とも語っている。
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