米台貿易協定の裏にある「半導体戦争」の現実
米国と台湾の新たな貿易協定は、中国包囲網強化と半導体覇権争いの新たな局面を示している。日本企業への影響と地政学的意味を探る。
840億ドル。これは台湾が今後5年間で米国から購入することを約束した金額だ。2月13日に正式署名された米台貿易協定は、単なる経済取引を超えた戦略的意味を持つ。
協定の核心:数字が語る真実
今回の協定で、米国は台湾製品への関税を15%に引き下げる。これは日本や韓国と同水準の待遇だ。一方、台湾は米国製品への関税障壁の99%を撤廃し、自動車から牛肉まで幅広い分野で市場を開放する。
特に注目すべきは、台湾が米国の自動車安全基準をそのまま受け入れることに合意した点だ。これまで台湾独自の追加要件を課していた非関税障壁を撤廃することで、トヨタやホンダなどの日系自動車メーカーにも影響が及ぶ可能性がある。
半導体をめぐる綱引き
しかし、この協定の真の焦点は半導体だ。1月の発表時点で、台湾企業は米国での生産能力拡大に2500億ドルの投資を約束している。米商務長官ハワード・ルトニック氏は「台湾の半導体サプライチェーンの40%を米国に移転させる」と明言した。
これに対し台湾側は「不可能」と反発。台湾の鄭麗君副首相は「数十年かけて構築した半導体エコシステムは、単純に移転できるものではない」と述べ、台湾を拠点とした国際展開を主張している。
中国の影:「経済的利益の流出」
中国は今回の協定を「台湾の経済的利益を流出させるもの」と批判し、民進党政権が米国に台湾の基幹産業を「空洞化」させていると非難した。習近平国家主席が台湾統一を「歴史的必然」と位置づける中、経済的結びつきの強化は地政学的緊張を高める要因となっている。
米国は12月に台湾への111億5000万ドルの武器売却を承認したばかりで、中国外務省は「一つの中国原則」への違反と強く反発している。
日本企業への波及効果
日本企業にとって、この協定は複雑な影響をもたらす。ソニーや任天堂など台湾で生産する日系企業は、米国市場でのコスト競争力向上の恩恵を受ける可能性がある。一方、自動車分野では米国基準の採用により、台湾市場での競争環境が変化するかもしれない。
半導体分野では、東京エレクトロンや信越化学など装置・材料メーカーにとって、台湾企業の米国投資拡大は新たなビジネス機会となる。しかし、サプライチェーンの分散化により、これまでの効率的な生産体制の見直しも迫られるだろう。
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