銀行 vs 暗号資産:ステーブルコイン「利回り」をめぐる攻防
米国上院でデジタル資産市場明確化法の前進を阻む「ステーブルコイン利回り」問題。銀行業界と暗号資産業界の妥協点を探る交渉の最前線を解説します。
1兆ドル規模の市場を動かすのは、たった一つの問い——「ステーブルコインに利息をつけていいのか?」
2026年3月10日、ワシントンD.C.で開かれた全米銀行協会(ABA)のサミット。会場には銀行幹部、上院議員、そして暗号資産業界の関係者が集まり、米国の暗号資産政策を左右する議論が繰り広げられました。表向きは礼儀正しい対話でしたが、その水面下では、伝統的な金融システムと新興デジタル金融の覇権をめぐる、静かな、しかし重大な攻防が続いていました。
何が起きているのか
問題の核心は、デジタル資産市場明確化法(Clarity Act)に盛り込まれた「ステーブルコイン利回り」の扱いです。
ステーブルコインとは、米ドルなどの法定通貨に価値を連動させた暗号資産の一種です。USDCやUSDTなどが代表例で、暗号資産取引所での決済や送金に広く使われています。問題は、暗号資産プラットフォームがこのステーブルコインを保有する顧客に「報酬(リワード)」を提供しようとしていることです。
銀行業界はこれを「事実上の預金利息」と見なし、強く反発しています。もし暗号資産プラットフォームが5〜6%の利回りを提供できるなら、消費者は銀行の普通預金口座から資金を引き出し、暗号資産プラットフォームに移してしまうかもしれない——いわゆる「預金流出(デポジット・フライト)」です。
昨年成立したGENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)は、ステーブルコイン発行者が顧客を引き付けるために利息を支払うことをすでに禁じています。しかし今回のClarity Actでは、暗号資産取引所などの関連企業がこの制限の「抜け穴」を使える可能性があると、ABAは主張しています。
妥協点を探る議員たち
交渉の中心にいるのは、民主党のアンジェラ・アルソブルックス上院議員(メリーランド州)と、共和党のトム・ティリス上院議員(ノースカロライナ州)です。両議員は上院銀行委員会のメンバーとして、法案を前進させるための妥協案を模索しています。
アルソブルックス議員はサミットで率直に語りました。「両側が『少しだけ不満』を感じる妥協案になるでしょう」。銀行側の懸念である預金流出を防ぎながら、暗号資産業界のイノベーションも認める——そのバランスを探っているのです。
現時点で浮上している妥協案のポイントは、「利回りの対象を限定する」というものです。口座残高に応じた静的な報酬(銀行の定期預金に類似)は認めない一方で、取引の活発さに連動した報酬(トランザクション・ベース)は認める可能性がある、という方向性です。
興味深いのは、米国最大の銀行であるJPモルガン・チェースのCEO、ジェイミー・ダイモン氏が最近のインタビューで「取引ベースの報酬なら受け入れられる」と示唆したことです。これは、暗号資産業界がホワイトハウスとの会合で提案してきた立場と一致しています。
法案成立への険しい道
仮に委員会レベルで妥協が成立しても、Clarity Actが最終的に成立するまでには、まだいくつもの壁があります。
上院農業委員会はすでに独自バージョンの法案を可決しており、両バージョンを統合する作業が必要です。その後、上院本会議での採決では、相当数の民主党議員の賛成が必要になります。
しかし民主党内には、ステーブルコイン利回り以外にも懸念事項が山積しています。分散型金融(DeFi)セクターが悪意ある行為者に利用されるリスク、CFTCとSECへの民主党系委員の任命問題、そして最も政治的に敏感な問題として、「政府高官が個人的な暗号資産ビジネスで利益を得ることを禁止すべき」という要求があります。これは事実上、ドナルド・トランプ大統領の暗号資産ビジネスへの関与を念頭に置いたものです。
さらに手続き上の問題もあります。上院の審議時間は常に逼迫しており、イランをめぐる情勢や、トランプ大統領が「有権者ID法案が通るまでは他の法案に署名しない」と示唆していることも、スケジュールに影響を与える可能性があります。
日本市場への視点
この議論は、太平洋を越えて日本にも無関係ではありません。
日本は2017年に世界に先駆けてビットコインを法定支払手段として認め、暗号資産規制の先進国として知られてきました。しかし、ステーブルコイン規制については、2022年に成立した改正資金決済法により、ステーブルコインの発行を銀行・信託会社・資金移動業者に限定し、利回りの提供は事実上認めていません。
米国がステーブルコイン利回りを一定範囲で認める方向に進んだ場合、三菱UFJやみずほなどの大手銀行が提供するデジタル通貨サービスとの競争環境が変わる可能性があります。また、日本の個人投資家が米国の暗号資産プラットフォームを通じて利回りを求めて資金を移動させる動きが加速するかもしれません。
金融庁が今後この問題をどう捉えるか、注目が必要です。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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