モナーク蝶は復活するのか?希望と政治の間で
絶滅危惧に瀕していたモナーク蝶の個体数が微増。しかしトランプ政権の保護政策後退と気候変動が影を落とす。自然保護と農業・政治の複雑な関係を読み解く。
毎年秋、数千万匹の蝶がロッキー山脈の東側から、メキシコ中部の同じ森へと飛んでいきます。羽の重さはわずか0.5グラム。それでも彼らは、数千キロの旅を完遂します。
そのモナーク蝶が、長い低迷の末に、わずかながら回復の兆しを見せています。2025年冬の調査では、メキシコの越冬地で蝶が集まった木々の面積が約7.2エーカー(約2.9ヘクタール)に達しました。前年の4.4エーカー、その前年の2.2エーカーから着実に増加しています。保護団体WWFメキシコが発表したこのデータは、四半世紀にわたる減少傾向に、ひとつの「区切り」が訪れたことを示唆しています。
なぜ減り、なぜ今増えているのか
モナーク蝶の激減は、意外な場所から始まりました。1990年代、アメリカ中西部の農家たちは、除草剤「グリホサート」に耐性を持つ遺伝子組み換えトウモロコシや大豆の種を使い始めました。農地に除草剤を散布することで、雑草を効率よく駆除できるようになった一方、モナーク蝶の幼虫が唯一食べることのできる植物であるミルクウィード(トウワタ)も、雑草として一掃されてしまったのです。
ウィスコンシン大学マディソン校の名誉教授で、アメリカを代表するモナーク研究者のカレン・オーバーハウザー氏はこう述べています。「私たちは今、個体数の減少が止まった、相対的な安定期にいます」。今回の回復の主な要因は、昨年の豊富な降雨量によるものと見られています。移動経路にあたるアメリカ中部で花が多く咲き、成虫の蜜源が豊富だったことが、越冬地への到達数を押し上げました。また、全国各地で進められているミルクウィードの植栽活動も、じわじわと効果を上げているといいます。ニューヨーク市内の小さな個人庭園や公園でさえ、蝶たちの命をつないでいるのです。
ただし、この数字を手放しで喜ぶことはできません。モニタリング開始から最初の10年間の平均は約21エーカーであり、科学者が「持続可能」と考える水準は約15エーカーです。現在の7.2エーカーは、まだその半分にも届きません。元アメリカ魚類野生生物局職員のロリ・ノードストロム氏は「個体数を回復させるには、はるかに多くの生息地を取り戻す必要があります。私たちはまだ、目標からほど遠い場所にいます」と語ります。
保護政策をめぐる政治の波
生態学的な問題は、今や政治問題でもあります。バイデン政権は2024年末、モナーク蝶を絶滅危惧種保護法(ESA)の「絶滅のおそれのある種(threatened)」に指定する提案を行いました。これが実現すれば、生息地の保護や農業活動への規制が伴う可能性がありました。
しかし、トランプ大統領の第2期政権が始まると、この手続きは事実上棚上げにされました。アメリカ魚類野生生物局は、2026年9月末まで最終決定を下さない見通しを示しています。これに対し、2つの環境団体が同局を提訴し、決定期限の法的拘束を求めています。
当局は「最善の科学的知見に基づき評価を続けている」と述べる一方、「自発的・地域主導型の保護活動を優先し、連邦規制の必要性を減らすことを重視している」と説明しています。規制よりも自主的取り組みを優先するこの姿勢は、農業業界の支持を得やすい反面、強制力を持つ保護措置が遅れることへの懸念も生んでいます。
日本社会との接点——「見えない生態系」の問題
この問題は、遠いアメリカの話に見えるかもしれません。しかし、日本にとっても無縁ではありません。
日本でも、農薬や除草剤の使用、そして農地の整備によって、チョウや在来植物の生息地が失われてきた歴史があります。環境省は国内の生物多様性保全に取り組んでいますが、農業の効率化と生態系保全のバランスは、日本でも常に問われ続けている課題です。また、モンサント(現バイエル)が開発した遺伝子組み換え種子とグリホサートは、日本の農業でも使用されており、その影響は決して対岸の火事ではありません。
さらに、気候変動の文脈で考えると、モナーク蝶の越冬地であるメキシコの森林は、気温上昇や異常気象の影響を受けやすい場所にあります。研究者たちは、気候変動がモナーク蝶にとっての気象条件をさらに悪化させる可能性を懸念しています。日本が直面する生物多様性の損失も、同じ地球規模の変化と連動しています。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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