EVの次へ:サムスンSDIが描くバッテリーの未来
サムスンSDIがEV市場の減速を受け、ESS・ロボット・UAM分野へのピボットを宣言。InterBattery 2026で全固体電池プロトタイプも公開。日本企業への影響と業界の構造転換を読む。
EVが売れなくなったとき、バッテリーメーカーはどこへ向かうのか。
2026年3月11日、ソウルで開幕した韓国最大のバッテリー産業展示会「InterBattery 2026」。その開幕式のスピーチで、サムスンSDI研究開発センター長の주용락(Joo Yong-lak)上級副社長は、静かだが重要なメッセージを発した。「バッテリー産業は、EVを超えてESS・ロボット・都市型航空モビリティ(UAM)を牽引する主要な成長エンジンとなった」。
この一言が示すのは、単なる事業多角化の話ではない。世界のバッテリー産業が、EVという一本柱から複数の柱へと構造的に転換しつつあるという、より大きな変化の予兆だ。
EV減速という現実、そして次の市場
サムスンSDIがこうした発言をする背景には、EV市場の明確な逆風がある。欧米での需要鈍化、中国メーカーとの価格競争、そして各国での補助金縮小が重なり、バッテリーメーカー各社は収益圧力にさらされている。サムスンSDI自身も例外ではなく、2025年には業績の下方修正を余儀なくされた。
そうした中で、주용락センター長が示した数字は注目に値する。グローバルのESS市場は、2024年の399GWhから将来的に1,232GWhへと約3倍に拡大する見通しだ。ロボット向けバッテリー需要は2025年のわずか0.03GWhから2030年には1.4GWhへ急増し、UAM向けは2030年の3.7GWhから2035年には68GWhに達するという。
数字だけ見れば、まだ小さい。だが方向性は明確だ。エネルギー貯蔵・ロボティクス・空飛ぶクルマという3つの領域が、次のバッテリー需要を生み出す主役になりつつある。
さらにサムスンSDIは今回の展示会で、「フィジカルAI」アプリケーション向けのパウチ型全固体電池プロトタイプを公開した。量産開始は2027年下半期を予定している。全固体電池は、従来のリチウムイオン電池と比べて安全性・エネルギー密度の両面で優れるとされ、ロボットやウェアラブルデバイスへの応用が期待されている。
日本企業にとって何を意味するのか
この動きは、日本の産業界にとっても他人事ではない。
まずトヨタを筆頭とする日本の自動車メーカーは、全固体電池の開発に長年注力してきた。トヨタは2027〜2028年頃の全固体電池搭載EVの市場投入を目指しているとされており、サムスンSDIとの開発スピードの競争が現実のものとなっている。韓国勢が2027年下半期に量産を開始するとなれば、日本メーカーにとっては技術的な先行を許す可能性もある。
一方でロボティクス分野では、ソニー・ホンダ・ファナックといった日本企業がヒューマノイドロボットや産業用ロボットの開発を加速させている。日本は高齢化と労働力不足という構造的課題を抱えており、ロボット導入への社会的需要は他国以上に高い。バッテリー性能の向上は、こうした日本のロボット産業にとって直接的な恩恵をもたらす可能性がある。
ただし、サプライチェーンの観点では複雑な側面もある。日本の製造業が韓国製バッテリーへの依存を深めることへの懸念は、政策立案者の間でも議論されてきた。エネルギー安全保障と産業競争力のバランスをどう取るかは、引き続き重要な問いだ。
「フィジカルAI」という新しい文脈
주용락センター長の発言の中で、もう一つ注目すべきキーワードがある。「AI」だ。
サムスンSDIは、データセンター向けのエネルギー貯蔵需要だけでなく、「フィジカルAI」——つまり物理的な世界で動くロボットや自律型機械——向けのバッテリー需要を重視している。OpenAIやGoogle DeepMindなどが推進するAIの進化は、クラウド上の計算だけでなく、現実世界での物理的な動作へと拡張しつつある。そこに必要なのが、高性能・高安全性のバッテリーだ。
この文脈は、バッテリー産業をAI産業のインフラとして再定義する可能性を持っている。半導体がAIの「頭脳」なら、バッテリーは「筋肉と心臓」だという見方もできる。
もっとも、全固体電池の量産には依然として高いハードルがある。製造コスト、歩留まり率、スケールアップの難しさは、業界全体が直面する課題だ。2027年という目標が現実のものとなるかどうかは、まだ見極めが必要だ。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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