MIT研究者が中国へ回帰、半導体人材獲得競争の新局面
30歳の半導体研究者・江建峰氏がMITから北京大学へ移籍。中国の次世代チップ技術開発と国際人材争奪戦の実態を探る。
30歳で博士課程指導教授になる――通常なら8〜10年かかるこの道のりを、江建峰氏は18ヶ月で成し遂げた。
MITでの博士研究員を経て、この若き半導体研究者は北京大学に戻り、主任研究員・准教授・博士課程指導教授の三役を担うことになった。彼の専門は二次元セレン化インジウム(InSe)――既存の「シリコン覇権」に挑戦する材料だ。
異例の昇進スピードが示すもの
江氏の経歴は現代の人材争奪戦の縮図といえる。山東大学で修士号を取得後、北京大学で博士号を取得。そして2024年6月に博士号を取得したばかりで、MITでの短期間の研究を経て中国に戻った。
「学部の卒業プロジェクトから、InSe半導体研究に携わってきました」と江氏はDeepTechのインタビューで語る。「山東大学から北京大学、そしてMITへ――あっという間の9年間でした」
この異例の昇進スピードは、中国が次世代半導体技術において優秀な人材をいかに重視しているかを物語る。通常の学術キャリアパスを大幅に短縮してでも、有望な研究者を確保したいという意図が見て取れる。
シリコンを超える技術への挑戦
江氏が研究するInSeは、従来のシリコンベース技術に代わる可能性を秘めている。より小型で高速、かつ省エネルギーなコンピュータチップの実現を目指すこの技術は、中国が半導体分野で「リープフロッグ」を狙う戦略の核心部分だ。
北京大学での最高栄誉である「五四メダル」を受賞した江氏の研究は、単なる学術的興味を超えた国家戦略的意味を持つ。中国が米国の技術制裁下でも独自の技術基盤を構築しようとする中、このような基礎研究の重要性は増している。
日本への示唆
江氏のような若手研究者の動向は、日本にとっても無関係ではない。ソニーや東芝などの日本企業も半導体分野で競争力を維持する必要があり、優秀な人材の確保は共通の課題だ。
特に注目すべきは、中国が単に既存技術をキャッチアップするのではなく、次世代技術で先行しようとしている点だ。これは日本の半導体産業にとって、従来の競争軸が変わる可能性を示唆している。
記者
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