量子コンピューティング投資が2倍増:「実用化前夜」の意味とは
量子コンピューティングが実用化されていない中、投資額が2倍に。Quantonation社の2.6億ドル調達から見る業界の真の変化とは
量子コンピューティングはまだスーパーコンピューターを置き換えていない。それなのに、なぜ投資家たちは資金を倍増させているのだろうか?
逆説的な投資ブーム
量子・物理学系スタートアップに特化するQuantonation Venturesが、2.6億ドル(約220億円)の第2ファンドを組成完了した。これは第1ファンドの2倍以上の規模だ。
興味深いのは、量子コンピューティングが実用段階に達していない現実と、投資熱の高まりが同時に起きていることだ。多くの専門家が「量子の冬」の到来を警告していたが、実際には正反対の現象が起きている。
NVIDIAのジェンセン・ファンCEOが2025年6月に「量子コンピューティングは変曲点に達している」と宣言したことも、この投資熱を後押ししている。
「つるはし・シャベル」戦略の台頭
Quantonationのパートナーであるウィル・ゼン氏が指摘するのは、投資機会の質的変化だ。量子チップ開発企業だけでなく、量子産業を支える「つるはし・シャベル」企業への投資が増えている。
オランダのQbloxがその典型例だ。同社は量子制御ハードウェアとソフトウェアを開発し、すでにQuantonationのポートフォリオ企業に製品を販売していた。つまり、量子エコシステムが実際に機能し始めているのだ。
GoogleのWillowチップが2024年にエラー訂正で画期的成果を上げたことも、この流れを加速させている。量子システムの最大の課題である「エラーの多さ」に対する解決策が見え始めたからだ。
日本企業への示唆
Quantonationの投資先は、フランスのPasqalやQuandelaだけでなく、アジア・北米にも広がっている。ゼン氏は「多くの分野でまだ地域的な勝者が決まっておらず、研究は世界各地の大学から生まれている」と説明する。
これは日本企業にとって重要な意味を持つ。東芝がQuantonationの新たな出資者に名を連ねたことからも分かるように、日本の技術企業も量子エコシステムの一部として位置づけられ始めている。
しかし、量子技術の実用化タイミングは依然として不透明だ。現代の暗号を破る量子コンピューターの登場時期に明確な予測はない。それでも政府と巨大テック企業が競争に参加し続けている。
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