イランへの地上侵攻は、アメリカが踏み込んではならない戦争か
トランプ政権がイランへの大規模軍事エスカレーションを検討中。議会承認なき地上侵攻の可能性と、その国際的・経済的影響を多角的に分析します。
歴史上、最大規模の米軍地上作戦になるかもしれない。それが今、金曜日の夜明けを待っている。
米政治メディアAxiosは今週、トランプ政権がイランに対する大規模な軍事エスカレーションの複数の選択肢を検討していると報じました。その内容は、イランの主要石油輸出拠点であるハルク島への侵攻または海上封鎖、さらには米軍をイラン国内深部へ送り込み、濃縮ウランを押収するという作戦まで含まれています。
リバタリアン系シンクタンクケイトー研究所の研究員ブランダン・バックは、「本格的なイラン侵攻は、規模においてベトナム戦争や1991年の湾岸戦争に匹敵するか、それを超える可能性がある」と警告しています。イラクへの2003年の侵攻と同等の作戦をイランに対して行うとすれば、その人口規模から試算して最大160万人の兵士が必要になるとも指摘しています。
「戦争は勝った」と言いながら、なぜ兵を増やすのか
奇妙な矛盾があります。トランプ大統領は今週初め、「戦争はすでに決定的に勝利した」と公言しました。しかし同じ週、ペンタゴンは陸軍第82空挺師団から約2,000人の兵士を中東に向けて出動させる命令を下しました。現在、イランとの戦争に関与している米軍兵士の総数は5万人以上に上ります。
ホワイトハウスの報道官カロライン・レヴィットは記者会見で「大統領は常に選択肢を手元に置いておくことを好む」と述べるにとどまりました。一方、第82空挺師団は「紛争の開始時に展開される部隊」として知られており、その動員が「終結」ではなく「拡大」を示唆しているとの見方が広がっています。
議会内でも懸念の声が高まっています。共和党のナンシー・メイス下院議員(サウスカロライナ州)は、下院軍事委員会の非公開ブリーフィングを受けた後、「国民に示された戦争の大義と、今日ブリーフィングで聞いた軍事目標は一致していない。この乖離は深刻だ」とSNSに投稿しました。同議員は今月初め、戦争を止めようとする決議に反対票を投じていましたが、今や「地上部隊の派遣は支持しない」と明言しています。
民主党側も批判を免れません。下院民主党指導部は、イランに関する戦争権限決議の採決を少なくとも4月中旬まで先送りする方針を決めたと報じられており、「議会が休会に入る前に行動しなければ、手遅れになる」との批判が出ています。
日本にとって、この戦争は他人事ではない
イランとの戦争が拡大すれば、その影響は中東にとどまりません。イランはホルムズ海峡を実質的に支配する地理的位置にあります。この海峡は、世界の原油輸送量の約20%が通過する要衝です。日本の原油輸入の約90%は中東に依存しており、ホルムズ海峡が封鎖または不安定化すれば、エネルギー価格の急騰は避けられません。
トヨタや日産をはじめとする自動車メーカー、新日本製鐵などの素材産業、そして電力会社——これらすべてが原油価格に敏感です。円安が続く中でのエネルギーコスト上昇は、企業収益を直撃し、家計への転嫁も避けられないでしょう。
さらに、日本政府は長年、イランとの独自の外交チャンネルを維持してきました。2019年には安倍晋三元首相がテヘランを訪問し、米国とイランの仲介役を務めようとしました。日本にとってイランは「敵」ではなく「対話の相手」であり続けてきたのです。米国主導の軍事拡大は、この外交的立場を根底から揺るがしかねません。
戦争に「出口戦略」はあるのか
歴史は繰り返す、と言われますが、それは必ずしも楽観的な意味ではありません。2003年のイラク侵攻は「短期決戦」として始まり、20年以上にわたる泥沼に変わりました。イランはイラクの約4倍の国土面積を持ち、人口も8,700万人を超えます。革命防衛隊を中心とした軍事組織は、イラクとは比較にならない規模と練度を誇ります。
米国内でも、この戦争は議会の承認を得ていないという法的問題が浮上しています。1973年の戦争権限法は、大統領が議会の承認なしに軍事行動を継続できる期間を60日に制限しています。すでに開戦から約1か月が経過しており、法的な時計は刻々と進んでいます。
ケイトー研究所のバックは「トランプ氏は『勝利』を宣言して撤退すべきだ」と提言しています。しかしそれは、政治的に可能な選択肢なのでしょうか。
記者
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