データセンターの代償:インドの農地で何が起きているか
インドが外資クラウド企業に20年間の税優遇を付与する一方、GoogleやMicrosoftのデータセンター建設現場では農民との衝突が深刻化。AI infrastructure投資の裏側に潜む土地収用問題を読み解く。
150億ドルのデータセンターが建設予定の土地に、かつて水田とマンゴー農園が広がっていた。
インド南部アンドラ・プラデーシュ州。Googleが計画するこの大規模施設をめぐり、地元農民と活動家たちが声を上げている。問題は単なる開発と自然保護の対立ではない。土地取得のプロセスそのものが「不透明で秘密主義的」だと批判されているのだ。
インド政府の「AI大国」構想と、その現実
2026年2月、インド政府は海外のクラウドサービス企業に対し、20年間の税優遇措置を発表した。インド国内のデータセンターを通じてグローバル顧客にサービスを提供する企業が対象で、Google、Microsoft、Amazonといった米国ビッグテックのさらなる投資を引き込むことが狙いだ。政府はインドを「AIインフラのグローバルハブ」として位置づけようとしている。
しかし現場では、まったく異なる現実が進行している。
インドの土地収用法には「公共目的」条項があり、国家安全保障やインフラ整備など公益に資するプロジェクトのために政府が民有地を取得できる。この条項が今や、AIデータセンターにも適用されている。政府は「データセンターは開発と雇用創出に不可欠」と位置づけているためだ。
だが、ニューデリーを拠点とする非営利団体Digital Empowerment Foundation(DEF)の調査部門を率いるArpita Kanjilalは、2025年8月からテランガーナ州のMicrosoftとAmazonのデータセンター建設現場を調査してきた。その結果、農民や村落レベルの自治組織が、土地割り当ての意思決定から完全に排除されていたことが明らかになった。「公共目的法はすべて、民間企業への補助金の上に成り立っている。私たちがまだ把握しきれていない隠れたコストが、あまりにも多い」とKanjilalは語る。
「同じ悪魔が、世界中に同じ顔を持っている」
この問題はインドだけではない。
米国では、Amazon、Google、Microsoftの複数のデータセンター計画が住民の反対によって中断または撤回されている。2025年9月、Googleはインディアナポリスで計画していた10億ドル・470エーカー規模の施設を地元の反発を受けて撤回。Microsoftはミシガン州での計画を一時停止し、地域との対話を優先させた。欧州でも、オランダとドイツでMicrosoftとGoogleのデータセンター計画がそれぞれ住民の反対で頓挫している。
スペインでは、Metaのデータセンター拡張に反対する市民団体「Tu Nube Seca Mi Río(あなたのクラウドが私の川を干上がらせる)」を率いるAurora Gómez Delgadoが、世界中の抵抗グループに連帯を呼びかけている。「世界中で同じ問題が起きている。なぜなら、世界中に同じ5社しかいないから。悪魔の顔は、私たちにとって同じなのです」。
ただし、抵抗の「効き目」には大きな差がある。農地問題を専門とする弁護士Jillian Hishawは、「米国の土地所有者は状況によって購入提案を断る機会が与えられる。しかし私がインドやアフリカで関わってきた土地所有者には、同じ権利が与えられていない」と指摘する。米国やEUでは、土地所有権が強固な私権として法的に保護されているのに対し、インドでは「公共目的」の解釈が拡大され、農民の交渉力は著しく限られているのだ。
日本企業にとっての意味
日本の視点から見ると、この問題は決して対岸の火事ではない。
ソフトバンク、NTT、富士通など日本の主要IT・通信企業は、インドでのデータセンター投資を加速させている。インドは2025年時点で世界のハイパースケールデータセンターの半数以上を米国が占めるという構造への「分散」先として、日本企業にとっても魅力的な市場だ。しかし今回の問題が示すように、現地の社会的摩擦を軽視したまま投資を進めれば、プロジェクトの遅延・中断リスクが高まる。
また、日本国内でも再生可能エネルギーをめぐる「景観・農地問題」はすでに顕在化している。太陽光パネルの大規模設置が農村コミュニティと衝突するケースは、インドのデータセンター問題と構造的に類似している。AIインフラの「物理的なコスト」を誰が、どのように負担するかという問いは、日本社会にとっても無縁ではない。
デジタル権利団体Internet Freedom Foundationに関わる弁護士のIndumugi C.は、「連邦政府も州政府も、これを投資問題としてのみ捉えており、政治経済的な問題として見ていない」と批判する。2026年3月に発表された彼女のファクトシートは、インドの規制当局がデータセンター設置に関する明確な政策を策定できていないことを詳細に指摘している。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
関連記事
インドの新興AI企業Sarvam AIとKrutrimは、22の公用語を持つ多言語社会のために「軽量・低コスト・母国語対応」のAIを開発。日本の高齢化社会や地方格差にも示唆を与えるアプローチとは。
AIポストトレーニング専門スタートアップDeccan AIが25億円超を調達。インドの100万人超のコントリビューターがGoogleやOpenAIのモデルを「育てる」新たなAIバリューチェーンの実態とは。
ニューメキシコ州の陪審員がMetaに対し、州法違反と消費者欺瞞で3億7500万ドルの罰金を命じた。この判決が日本のSNS規制や子どもの安全保護に与える影響を多角的に分析する。
インド最大のデジタル決済プラットフォームPhonePeが、中東情勢の悪化と株式市場の不安定さを理由にIPOを延期。約1.5兆円規模の上場計画が示す新興市場フィンテックの課題とは。
意見
この記事についてあなたの考えを共有してください
ログインして会話に参加