中国禁止でも「数億ドル」取引 予測市場の地下経済
Polymarketが中国語スタッフ採用で中国市場開拓。VPN経由で月数億ドル取引、政府規制下でも拡大する予測市場の実態とは
74,000ドル。春節の舞台にどのロボットダンサーが登場するかを賭ける市場に、これだけの資金が動いている。一見すると些細な話題だが、この数字が示すのは、中国政府の厳格な規制をかいくぐって急成長する「地下予測市場」の実態だ。
暗号通貨予測プラットフォームPolymarketが、中国語対応スタッフの採用を進めている。中国では暗号通貨取引も予測市場も法的に禁止されているにも関わらず、同社のアジア市場開拓担当者ジャスティン・ヤン氏は「中国はPolymarketにとって非常に重要な地域になっている」と語る。
規制の隙間で繁栄する「賭け」の世界
Polymarketは2020年創設の予測市場プラットフォームで、米連邦準備制度の次の金利決定から「2027年までにイエス・キリストが再臨するか」まで、あらゆるトピックに暗号通貨で賭けることができる。2024年米大統領選以降人気が急上昇し、週間取引高は数十億ドルに達している。
中国では「グレートファイアウォール」によってPolymarketへのアクセスは遮断されているが、VPN(仮想プライベートネットワーク)を使って規制を回避する投機家が後を絶たない。ヤン氏によると、アジア地域からの月間取引高は「数億ドル」に上るという。
北京の起業家ジホン・ジョウ氏は、Polymarketの活動を追跡するAIアシスタントを開発し、NBA試合の進行中にベットする価値があるかを計算するアルゴリズムまで作成した。「最終的に予測市場は主流の金融市場を補完できるようになる」と彼は語る。
「アヒルのように見えるなら、それはアヒルだ」
中国のソーシャルネットワーク小紅書では、Polymarketの愛好家たちが自作のアルゴリズムや賭けの成果を投稿している。春節関連の賭けでは、Unitreeのロボットダンサーが春節祝賀番組に登場する確率を99%と予想する市場が形成された。
しかし、中国政府がこうした活動を見逃すとは考えにくい。ブロックチェーン情報企業ChainArgosの法務責任者パトリック・タン氏は「中国政府はこうしたことに対して決して甘くない」と警告する。「アヒルのように見えて、アヒルのように歩いて、アヒルのように鳴くなら、それはアヒルだ。規制当局との対話にすら至らないだろう」
中国政府は暗号通貨への取り締まりを強化しており、海外企業が中国の個人に暗号通貨関連サービスを提供することを禁じている。ギャンブルに対して長年厳格な姿勢を取ってきたアジア諸国では、予測市場が寛容に扱われる可能性は低いとタン氏は指摘する。
日本市場への示唆
この現象は日本の金融業界にも重要な示唆を与える。日本では暗号通貨は合法だが、予測市場は賭博法との関係で曖昧な位置にある。楽天やSBIなどの金融大手が暗号通貨事業を展開する中、規制当局は新しい形態の金融商品にどう対応するかという課題に直面している。
Polymarketのような海外プラットフォームが日本でも人気を集めれば、金融庁は規制の枠組みを再検討する必要に迫られるかもしれない。特に、2025年の大阪万博や将来の政治イベントを対象とした予測市場が登場すれば、社会的な議論は避けられないだろう。
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