AIブームの壁を「AI」で突破した男の逆転資金調達術
eSportsスタートアップLucra SportsがARK Investから2000万ドルのシリーズBを調達。AI企業でなくても投資家を引き付けた、創業者の2つの戦略とは。
AIを作っていない会社が、「AI」を武器に投資家を口説いた。
2025年末、Lucra Sportsの創業者兼CEO Dylan Robbins は深刻な壁にぶつかっていました。投資家との商談の3分の1は、ピッチを始める前に「うちはAIしか投資しない」と打ち切られる。残りも、話を聞いた後で同じ答えが返ってくる。AIブームが投資の世界を完全に支配していた時代の話です。
そして2026年5月、Lucra Sports は2000万ドル(約30億円)のシリーズBラウンド完了を発表しました。リード投資家は、あのCathie Wood率いるARK Investのベンチャーファンド。スタートアップのシリーズBラウンドでARK Investがリードを務めるのは、史上初めてのことです。
ニューヨークのダーツバーから始まった縁
Lucra Sports が提供するのは、企業向けのホワイトラベル型インタラクティブゲーミング競技プラットフォームです。わかりやすく言えば、ポイントカードの代わりに「オンライントーナメント」や「友人同士の賭け」を提供する、新しい形のロイヤルティプログラム。Five Iron Golf(ゴルフ練習場チェーン)、Dave & Buster's(アミューズメント複合施設)、Chess Kingなどが顧客として名を連ねます。
ARK Invest との縁は、ビジネスの場ではなく、ニューヨークのダーツバーで生まれました。Robbinsが見知らぬ男性とダーツを楽しんだのが最初の出会い。6ヶ月後に同じバーで再会し、雑談の流れで相手がARKの社員だと判明。その縁がシリーズAへの小切手につながり、やがてシリーズBのリード投資へと発展したのです。
「誰と話しているかわからない。だから、どこでも感じよく、楽しく人と関わることが大切だ」とRobbinsは振り返ります。
「AIがなくても、AIで語れ」という逆転の発想
ARK Invest にとって、このジャンルへの再投資は簡単な決断ではありませんでした。同ファンドはかつて、スキルベースのゲーミングプラットフォームSkillzに多額を投資し、損失を出して撤退した経緯があります。eSports分野への投資には、一度火傷した記憶があったのです。
にもかかわらずRobbinsがARKを引き付けられたのは、ピッチの組み立てを根本から変えたからでした。改訂後のピッチデッキは、冒頭からAIの話題を展開します。ただし、「自社のAI技術」ではなく、「AIが世界に与える影響」という切り口で。
論理はこうです。「AIが本当に普及すれば、人々の余暇時間は増える。余暇が増えれば、ゲームや娯楽への需要が高まる。つまり、Lucraのビジネスは追い風を受ける。逆にAIが期待外れに終われば、非AIへの分散投資として価値がある」。どちらに転んでも合理的なヘッジになる、という論法です。
もちろん、この論理だけで投資家が動いたわけではありません。Robbinsが強調するのは「年ごとの継続的な成長」という事業の基礎体力。そして、「ピクルボールからWordle(ワードゲーム)まで、ゲームをする18〜70歳のほぼすべてのアメリカ人」という、巨大なTAM(総市場規模)のビジョンです。
それでも、あるVCからの不採用通知には「TAMが小さすぎる」と書かれていました。Robbinsはその紙を壁に貼り、「もっと大きく考えろ」という戒めにしているといいます。
日本のスタートアップへの示唆
この話は、日本のスタートアップエコシステムにとっても他人事ではありません。
国内のVC市場でも、2024〜2025年にかけてAI関連スタートアップへの資金集中が顕著になっています。経済産業省の調査によれば、AI・データ分野への国内VC投資比率は年々上昇しており、非AI領域の起業家が資金調達に苦労するケースが増えています。
一方で、日本にはLucra Sports のビジネスモデルが刺さりうる土壌があります。任天堂のゲーム文化、ゲームセンターの伝統、そして高齢化社会における「つながり」と「余暇の充実」への需要。ゴルフ人口が依然として多く、eスポーツへの関心も若年層を中心に高まっています。Dave & Buster's のような業態は日本では珍しいですが、ラウンドワンや複合型アミューズメント施設との親和性は高いと言えるでしょう。
Robbinsの戦略で特筆すべきは、「AIに乗っかる」のではなく「AIの文脈の中に自分を位置づける」という思考の転換です。技術トレンドに直接参加しなくても、そのトレンドが生み出す社会変化のどこかに自分のビジネスを接続できれば、投資家の関心を引けるという実証でもあります。
これは、製造業やサービス業の変革を担う日本の非AIスタートアップにとって、参考になる視点かもしれません。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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