ペンタゴン、イラン戦争に27兆円超を要求
米国防総省がイランとの戦争継続のために2000億ドル超の補正予算を議会に要求。中東への追加派兵も検討中。日本のエネルギー安全保障と中東依存に深刻な影響が及ぶ可能性。
2000億ドル。その数字が示すのは、トランプ政権が「短期決戦」ではなく「長期戦」を想定しているという現実です。
ワシントン・ポスト紙が水曜日深夜に報じたところによれば、ペンタゴンは議会に対し、イランとの戦争継続のために2000億ドル(約27兆円)を超える補正予算の承認を求めました。同時に、数千人規模の追加部隊を中東に展開する案も検討されており、地上侵攻の可能性も排除されていません。
「承認なき戦争」が問いかけるもの
この戦争には、当初から大きな疑問符がついていました。トランプ大統領は議会の正式な宣戦布告なしにイランへの軍事行動を開始したとされており、米国内でも「憲法上の手続きを無視した戦争」との批判が根強くあります。米国内の世論調査でも、この戦争は「深く不人気」とされており、支持率は低迷しています。
それでも政権が大規模な予算を求める背景には、イランの核開発阻止という戦略目標があると見られています。イランはここ数年で核兵器製造に必要な濃縮ウランの備蓄を大幅に積み増しており、イスラエルとともにこれを「レッドライン」と見なしてきた米国が軍事的選択肢に踏み切ったという構図です。
日本への波紋——エネルギーと経済の交差点
日本にとって、この戦争は決して「遠い国の話」ではありません。
日本が輸入する原油の約90%以上はホルムズ海峡を通過します。ペルシャ湾の出口にあたるこの海峡は、イランが「封鎖する」と繰り返し警告してきた戦略的要衝です。戦闘が激化し、イランがホルムズ海峡の通航を妨害するような事態になれば、日本のエネルギーコストは急騰し、製造業から物流まで幅広い産業に打撃を与えます。
トヨタやソニーをはじめとする日本の輸出企業にとっては、円相場と原油価格という二重のリスクが同時に高まることになります。すでに物価上昇と賃金上昇の板挟みにある日本経済にとって、中東の不安定化はさらなる逆風となりかねません。
一方、日本政府はアメリカとの同盟関係を維持しながらも、イランとは長年にわたって独自の外交・経済関係を築いてきました。日本企業は制裁が強化される前の時代にイランのエネルギー開発に深く関与しており、今後の制裁強化は日本にとって複雑な立場を強いることになります。
各方面の反応——割れる評価
米国内では、野党・民主党だけでなく共和党内の財政保守派からも「2000億ドルという規模は正当化できない」との声が上がっています。すでに膨張する米国の財政赤字に、さらに巨額の戦費が加わることへの懸念は党派を超えています。
国際社会では、欧州諸国が外交的解決を求める声を強めており、中国とロシアはこの戦争を「米国の一方的な覇権主義」と批判しています。国連安全保障理事会でも米国は孤立気味であり、国際的な正統性の確保は大きな課題です。
イスラエルはこの軍事行動を支持していますが、湾岸諸国の一部は表向きの支持とは裏腹に、報復を恐れて水面下で懸念を示しているとも伝えられています。
「長期化」が意味するシナリオ
2000億ドルという予算規模は、イラク戦争やアフガニスタン戦争の初期費用と比較しても突出しています。これが議会で承認されるかどうかは不透明ですが、ペンタゴンがこれほどの規模を要求したこと自体、この紛争が数週間や数ヶ月で終わる性質のものではないという認識を示しています。
地上侵攻が現実となれば、イランの人口は9000万人を超え、山岳地帯と都市部が複雑に絡み合う地形は、過去の中東戦争とは異なる困難をもたらすでしょう。軍事専門家の多くは「イラクやアフガンよりもはるかに複雑な戦場になりうる」と警告しています。
記者
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