パナマ運河を巡る米中対立、中国の「重い代償」警告に小国が反発
パナマが中国系企業の港湾運営権を剥奪後、中国政府が「重い代償を払う」と威嚇。小国の主権と大国の影響力のせめぎ合いが浮き彫りに。
世界貿易の大動脈であるパナマ運河で、小国パナマが大国中国の威嚇に真っ向から反発している。中国政府がパナマに対し「政治的・経済的に重い代償を払うことになる」と警告したのに対し、パナマのムリーノ大統領は2月5日、「中国政府の脅しを強く拒絶する」と応酬した。
この対立の発端は、パナマ最高裁判所が香港系企業CKハチソンによる運河の港湾運営権を「違憲」として無効化したことだ。同社は1997年から25年間にわたり、運河の大西洋側クリストバル港と太平洋側バルボア港を子会社を通じて管理してきた。
トランプ圧力が引き金に
運営権剥奪の背景には、ドナルド・トランプ米大統領の強硬姿勢がある。トランプ氏は昨年、パナマ運河の「奪還」を宣言し、軍事行動も辞さない構えを見せながら、中国系企業との契約破棄を要求していた。
パナマの会計検査院長がCKハチソンとの契約を見直し、破棄を勧告したのも、こうした米国からの圧力を受けてのことだった。最高裁は会計検査院長の見解を支持し、契約条件が「パナマの国益に反する」と判断した。
中国政府の香港マカオ事務弁公室は、この判決を「ばかげている」「恥ずべきもの」と激しく非難。「パナマ当局は状況を認識し、進路を修正しなければならない」と威嚇的な声明を発表した。
小国の主権か、大国の論理か
ムリーノ大統領の反発は、小国が大国の威嚇に屈しない意志を示したものだ。「パナマは法の支配を堅持し、中央政府から独立した司法の決定を尊重する国家だ」との声明は、主権国家としての尊厳をかけた宣言でもある。
一方、中国外務省の林剣報道官は「中国企業の合法的権益を断固として守る」と表明し、米国を「冷戦思考とイデオロギー的偏見」と批判。「パナマ運河を強制的に所有しようとし、法の支配の名の下に国際法を侵害しているのは誰か、世界には明らかだ」と反撃した。
現在、デンマークの海運大手マースクが暫定的に港湾ターミナルの管理を引き継いでいる。新たな運営権者が決まるまでの措置だが、この人事も米国の影響力を物語っている。
日本への示唆
今回の事件は、日本にとっても他人事ではない。パナマ運河は日本の貿易ルートの要衝であり、トヨタやソニーなど日本企業の物流にも直結する。また、中国の「一帯一路」構想に参加する港湾運営企業の動向は、アジア太平洋地域の物流網全体に影響を与える可能性がある。
日本政府は米国との同盟関係を重視する一方で、中国との経済関係も無視できない。今回のような米中対立の激化は、日本企業にとって「どちらにつくか」の選択を迫られるリスクを高めている。
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