中パ同盟75年、米中対立の新たな舞台となる南アジア
中国とパキスタンの戦略対話、米国のパキスタン接近、インドとの関係改善。南アジアで展開される大国間競争の複雑な構図を分析します。
75年。中国とパキスタンが外相戦略対話で祝った両国関係の節目は、南アジアにおける地政学的競争の新章の始まりを告げている。
1月26日、習近平国家主席がインドに向けて「龍と象が共に踊る」未来を語った同じ週、パキスタンはトランプ大統領の「平和委員会」に参加することを発表した。この対照的な動きは、南アジアが米中対立の新たな主戦場となっていることを物語っている。
軍事協力から見える戦略的価値
昨年5月、パキスタンがインドとの衝突で中国製J-10C戦闘機を使用した際、中国の防衛関連株価は即座に上昇した。パキスタンの「勝利」は、中国にとって最高の武器展示会となったのだ。
「パキスタンは中国の軍事装備を全世界に成功裏に披露した」と、元パキスタン外相のクルシード・カスリ氏は語る。「中パ間の防衛協力は、この後さらに拡大するしかない」
中国は直ちに第5世代戦闘機J-35の売却を提案。しかし、この軍事的接近は思わぬ形で米国の介入を招いた。トランプ大統領が印パ停戦を仲介し、「核戦争を阻止した」として自身の功績を誇示したのだ。
トランプの「平和外交」が変える力学
トランプ政権の南アジア政策は、従来のインド重視路線から微妙にシフトしている。インドに対する輸入関税を50%に倍増させる一方で、パキスタンとの関係改善を図る姿勢は、地域のバランス・オブ・パワーに新たな変数を加えた。
「米国がより広範囲かつ一貫して南アジア全域と関わることは、地域バランスを維持し、戦略的過集中を防ぐ上で米国の利益に資する」と、アジア協会政策研究所のファルワ・アーメル氏は分析する。
実際、インドは米国の圧力に対し、1月27日にEUとの画期的な貿易協定を発表して対応。今週にはモディ首相とトランプ大統領が「貿易合意」に達したと発表したが、詳細は不透明な部分が多い。
中国の視点:戦略的忍耐か懸念か
中国にとって、米パ関係の改善は必ずしも予想外ではない。スティムソン・センターのユン・サン氏は「中国は米パ関係改善に好奇心を示しているが、シグナルやジェスチャーよりもアイデアの実現の方が重要だ」と指摘する。
しかし、パキスタンが米国により接近することで、中国が長年築いてきた戦略的影響力が脅かされる可能性もある。特に、中国パキスタン経済回廊(CPEC)プロジェクトの行方が注目される。
中パ外相戦略対話では「CPEC 2.0」への言及があったが、これは米国が「債務の罠」と批判してきたプロジェクトの新たな展開を意味する。パキスタンは米国に対してレアアース鉱物の提供も申し出ており、資源外交の新たな局面が開かれつつある。
日本への示唆
南アジアでの大国間競争激化は、日本にとっても無関係ではない。インド太平洋戦略を推進する日本は、インドとの特別戦略的グローバル・パートナーシップを基軸としつつ、地域の安定にも配慮する必要がある。
特に、中国の軍事技術がパキスタンを通じて実戦検証される構図は、日本の防衛政策にも影響を与える可能性がある。また、クアッド(日米豪印)の枠組みでのインドとの協力も、南アジアの力学変化を踏まえた調整が求められるかもしれない。
記者
関連記事
2026年6月、習近平(シー・ジンピン)が7年ぶりに平壌を訪れた。21発の礼砲と『新時代の親善』が並んだが、2019年にはあった『朝鮮半島の非核化』は今回の官営報道から消えた。象徴の過剰か、実質の格上げか。
パナマ外相が国連安保理でパナマ運河をめぐる緊張に対し「対立より対話」を訴えた。中国が議長国を務める場での発言が持つ地政学的意味を読み解く。
中国の董軍国防相が今年もシャングリラ対話を欠席する見通し。アジア最大の安全保障フォーラムに低レベルのPLA代表団を派遣する方針で、地域の安全保障対話における中国の姿勢に注目が集まっています。
中国がAIと電磁波物理学を融合した次世代電子戦技術を急速に開発中。日本の防衛産業・同盟戦略・電波政策に何をもたらすのか、多角的に読み解く。
意見
この記事についてあなたの考えを共有してください
ログインして会話に参加