米露核軍縮条約の失効、新たな軍拡競争の始まりか
新START条約が2月4日に失効。米露間の最後の核軍備管理協定がなくなり、世界の安全保障体制に大きな変化をもたらす可能性が浮上している。
2月4日、世界の核軍備管理の要石とも言える新START条約が静かに失効した。米国とロシアの核兵器を制約する最後の協定が消失したことで、冷戦終結以来築かれてきた軍備管理体制に終止符が打たれた可能性がある。
最後の砦が消えた日
新START条約は2010年にオバマ大統領とメドベージェフ大統領が署名した協定で、両国の戦略核弾頭を1,550発、配備済み運搬手段を700基に制限していた。この条約により、米露は定期的な査察を実施し、核兵器の透明性を保ってきた。
しかし、トランプ大統領は最近のインタビューで「期限が来れば来るで構わない」と述べ、延長交渉への関心の薄さを露呈した。一方、プーチン大統領も昨年2月に条約の履行停止を表明しており、両国とも新たな軍備管理枠組みへの意欲を示していない。
日本が直面する新たな現実
条約失効の影響は、核の傘に依存する日本にとって深刻だ。米国の拡大抑止の信頼性が問われる中、岸田政権は「核兵器のない世界」という理想と現実の安全保障ニーズの間で難しい舵取りを迫られている。
特に注目すべきは、中国の核戦力急拡大という新たな要素だ。米国防総省の推計では、中国は2030年までに1,000発以上の核弾頭を保有する可能性がある。これは従来の米露二極構造を根本から変える変化であり、日本の安全保障環境により複雑な要素を加えている。
軍産複合体の思惑
軍備管理の空白は、必然的に軍事産業の活性化を意味する。米国では既に核兵器近代化に1.7兆ドルの予算が計上されており、ロッキード・マーチンやノースロップ・グラマンなどの防衛企業の株価は堅調に推移している。
ロシアもサルマトICBMやポセイドン核魚雷など、新世代兵器の開発を加速させている。両国の軍事技術競争は、AI、極超音速兵器、宇宙兵器といった新領域にまで拡大している。
多極化する核の世界
今回の条約失効は、核軍備管理が米露二極時代から多極時代へと移行する転換点となる可能性がある。中国、インド、パキスタン、北朝鮮といった核保有国が存在する現在、従来の枠組みでは対応しきれない複雑さが生まれている。
ヨーロッパでは、マクロン仏大統領が「ヨーロッパの戦略的自律」を掲げ、独自の核抑止力構築を模索している。これは、米国の核の傘への依存から脱却しようとする動きとして注目される。
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