中堅国が見落とす「グローバル秩序崩壊」の真のコスト
アメリカ主導の国際秩序が揺らぐ中、日本を含む中堅国が直面する予想以上の経済・外交リスクを分析。多極化時代の新たな戦略が求められている。
70年間続いたアメリカ主導の国際秩序が音を立てて崩れ始めている。しかし、その変化の波を最も深刻に受けるのは、アメリカでも中国でもない。日本、韓国、オーストラリアといった中堅国かもしれない。
フィナンシャル・タイムズの最新分析によると、中堅国は現在の国際秩序の恩恵を「当然のもの」と考えがちだが、その基盤が失われた時の代償を過小評価している可能性が高いという。
見えないコストが表面化する時
現在の国際秩序の下で、中堅国は比較的低コストで安全保障と経済成長を両立してきた。NATOや日米安保条約のような同盟システムにより、軍事費を抑えながら経済発展に集中できた。また、WTOやIMFといった多国間機関を通じて、大国間の利害調整の恩恵も受けてきた。
しかし、アメリカの影響力低下と中国の台頭により、この「ただ乗り」システムが機能不全に陥りつつある。2024年のアメリカ大統領選挙以降、同盟国に対する防衛費負担増の圧力は一層強まっている。
日本の場合、防衛費のGDP比2%達成を求められているが、これは年間約10兆円の追加支出を意味する。一方で、中国との経済関係を完全に断ち切ることも現実的ではない。中国は日本の最大貿易相手国であり、23%の貿易シェアを占めているからだ。
多極化の罠:選択を迫られる中堅国
国際秩序の多極化は、表面的には中堅国に選択肢を与えるように見える。しかし実際は、より複雑で高コストな外交を強いられる結果となっている。
シンガポールの事例が示唆的だ。アメリカと中国の両方と良好な関係を維持してきた同国だが、最近は技術分野での「選択圧力」が高まっている。ファーウェイの5G機器を採用するか、アメリカのクリーンネットワーク構想に参加するかで、実質的な二者択一を迫られているのだ。
韓国も同様のジレンマに直面している。サムスン電子やSKハイニックスは、中国市場への依存度が高い一方で、アメリカの半導体規制に従わざるを得ない。結果として、兆ウォン規模の投資計画の見直しを余儀なくされている。
新たな秩序構築への参加コスト
既存秩序の恩恵を享受してきた中堅国にとって、新しい国際秩序の構築は予想以上に高コストとなる可能性がある。
まず、軍事・安全保障分野での自立性向上が求められる。これまでアメリカの「核の傘」に依存してきた国々は、独自の抑止力構築を検討せざるを得ない。オーストラリアがAUKUS協定で原子力潜水艦を導入するのも、その一例だ。
経済面では、サプライチェーンの多様化と「経済安全保障」への投資が不可欠となる。日本政府が4兆円規模の半導体戦略を打ち出したのも、技術的自立性確保の一環である。
さらに、国際機関での発言力確保には、より積極的な資金拠出と人材派遣が必要となる。現在、国際機関の上級職に占める日本人の割合は2.7%に過ぎず、経済力に見合った影響力を行使できていない。
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