欧州テック界に1カ月で5つの新ユニコーン誕生、その意味は?
2026年1月、ベルギーからウクライナまで5つのスタートアップがユニコーン評価額を達成。欧州テックエコシステムの変化と日本企業への示唆を探る。
10億ドルの評価額を超える企業を「ユニコーン」と呼ぶが、2026年1月だけで欧州に5社もの新しいユニコーンが誕生した。これは単なる数字の話ではない。投資環境が厳しくなった現在でも、VCが巨額の資金を投じる理由がそこにある。
多様な分野で生まれた5つのユニコーン
ベルギーのAikido Securityはサイバーセキュリティ分野で60億ドルのシリーズB調達により10億ドル評価を達成。同社のプラットフォームは既に10万チーム以上が利用している。注目すべきは、前年比で5倍の売上成長と3倍の顧客成長を記録している点だ。
リトアニア発のCast AIはクラウド最適化企業として、韓国の新世界グループ傘下のPacific Alliance Venturesから戦略投資を受けてユニコーン入り。同社は2025年4月に1億800万ドルのシリーズCを調達済みで、今回の投資でAI向けの新サービス「OMNI Compute for AI」も発表した。
最も注目すべきは、2024年設立のフランス防衛テック企業Harmattan AIだ。わずか創業2年で14億ドルの評価額を獲得。2億ドルのシリーズBはラファール戦闘機メーカーのダッソー・アビエーションが主導し、フランス・英国両政府との契約も既に締結している。
欧州テックの新たな自信
ドイツのOsapiensはESGソフトウェア分野で1億ドルを調達し11億ドル評価に到達。BlackRockとテマセクの合弁会社が主導した投資は、持続可能性への関心の高まりを象徴している。同社は既に2400社以上の顧客を抱え、サプライチェーンリスクの軽減から持続可能性報告まで幅広いサービスを提供する。
ウクライナ発のPreplyは14年の歴史を持つ語学学習プラットフォームとして、1億5000万ドルのシリーズDで12億ドル評価を達成。戦争下でもキーウに150人の従業員を抱え続ける同社の成功は、ウクライナの技術力の証明でもある。
Aikidoのチームは「シリコンバレーとテルアビブの巨人が支配する業界で、欧州が世界クラスのソフトウェアセキュリティ企業を構築し、グローバルに勝利できることを示した」とコメントしている。
日本企業への示唆
これらの欧州ユニコーンの成功は、日本企業にとって重要な示唆を含んでいる。特にサイバーセキュリティ分野では、ソニーやNTTなどの日本企業も積極的な投資を行っているが、Aikidoのような統合プラットフォームアプローチは参考になるだろう。
ESG分野では、トヨタや三菱商事といった企業が既にサプライチェーンの持続可能性に注力しているが、Osapiensのようなデータ統合ソリューションとの連携可能性も考えられる。
防衛テック分野では、日本政府も防衛費増額を決定しており、Harmattan AIのような自律防衛システムの技術は注目に値する。三菱重工や川崎重工などの防衛関連企業にとって、欧州企業との技術提携は新たな選択肢となり得る。
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