ガザは「忘れられた戦場」になるのか
米国とイスラエルによるイラン攻撃後、国際社会の関心がガザから離れる中、200万人以上のパレスチナ人が直面する人道危機の深刻な実態を多角的に検証する。
世界が別の戦争を見ている間、ガザでは何が起きているのか。
2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始した瞬間、ガザ地区の人々が最初に感じたのは恐怖ではなく、「忘れられる」という予感だったという。2年以上続く戦争の中で極限まで追い詰められた200万人以上のパレスチナ人にとって、新たな地域紛争の勃発は、国際社会の目が自分たちから離れることを意味していた。その予感は、現実となりつつある。
「停戦」の名の下で続く危機
イスラエルは米国・イラン戦争の開始と同時に、ガザへの物資搬入口となる検問所を封鎖した。その後、ケレム・アブ・サレム(ケレム・シャローム)検問所を部分的に再開したものの、現在ガザに入る支援物資の量は、住民の必要量とされる1日600台のトラック分には遠く及ばない。
食料や洗浄用品などの生活必需品の価格は、場合によっては200〜300%も急騰していると国連児童基金(ユニセフ)のスポークスパーソンは述べている。燃料や重機の搬入も依然として厳しく制限されており、瓦礫の除去やインフラ復旧は事実上停止状態にある。
昨年10月に合意された「停戦」は、3段階の計画を想定していた。第1段階では軍事作戦の停止、イスラエル軍の部分的撤退、そして1日数百台規模の支援物資搬入と人質交換が盛り込まれていた。第2段階(2026年1月開始予定)では、より広範な撤退とガザの再建、暫定民政機関の設立が計画されていた。しかし、ガザの将来的な統治形態や武装勢力の武装解除をめぐる対立から、第2段階は早々に行き詰まった。
「停戦」合意後も、イスラエル軍によるガザ市やヌセイラト難民キャンプへの空爆・砲撃は続いている。ガザ保健省によれば、「停戦」開始以来、少なくとも648人が殺害され、約1万8000人が負傷している。
「世界の目が逸れた隙に」
ユーロ・メッド人権モニターのラミー・アブドゥ代表は、「イランとの戦争はイスラエルにガザでの犯罪を激化させる広い空間を与えた」とアルジャジーラに語った。彼は、イスラエルが世界の関心がイランに向いている間に、「組織的なジェノサイド行為」を継続していると警告する。
政治アナリストのアヘド・ファルワナ氏は、ネタニヤフ首相が国際的な注目の移行を利用し、「合意の第1段階を第2段階へ移行させないまま引き延ばしている」と分析する。現在、イスラエル軍はガザ全域の約60%を支配下に置いており、ファルワナ氏は「イスラエルはガザを恒常的な不安定状態に置くことを望んでいる」と指摘する。
2026年1月に設立された「ガザ統治のためのパレスチナ国家委員会」は、民政移管の第一歩として15人の専門家で構成される暫定機関だ。しかし、イスラエルはその委員のガザ入りを阻止し続けている。ラファ陸路検問所は10日連続で閉鎖されており、委員会の機能は事実上麻痺している。
経済専門家のモハンマド・アブ・ジヤブ氏は、「米国、いわゆる平和評議会、そして仲介国が統治の迅速な移管に向けた政治的関与を怠っていることが、状況の最も明確な指標だ」と述べ、国際社会の不作為を批判した。
日本から見えるもの
この問題は、日本にとって遠い地の出来事だろうか。日本は中東地域から原油輸入の大部分を依存しており、中東の不安定化はエネルギー安全保障に直結する。米国・イラン戦争の長期化は、ホルムズ海峡を通じた原油輸送に影響を与える可能性があり、日本のエネルギーコストや物価に波及するリスクがある。
より根本的な問題として、日本は国際人道法の遵守を重視する立場を取ってきた。「停戦」合意が存在しながらも攻撃が継続し、人道支援が意図的に制限されているとすれば、国際社会の一員として日本がどのような立場を表明するかは、外交的に無視できない問いとなる。
また、国連の機能不全が続く中、多国間主義への信頼が揺らぐことは、北朝鮮問題や台湾海峡の安全保障を含む東アジアの秩序にも間接的な影響を与えうる。「ルールに基づく国際秩序」という概念そのものの信頼性が問われているからだ。
記者
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