レバノンは再び「消される」のか――イスラエルの強制移住戦略
イスラエル軍が南レバノンとベイルート南部郊外の住民に退避命令を発令。約400人が死亡し、64,000人以上が避難。ヒズボラの支持基盤を切り離す「人口地図の書き換え」戦略とは何か。
60歳のレバノン南部の住民は、生涯に6度か7度の戦争を経験し、3度家を建て直した。今、また逃げなければならない。
何が起きているのか
2026年3月、レバノンは再び炎に包まれています。イスラエル軍はこの一週間で約400人を殺害し、南レバノン全域とベイルート南部郊外(ダーヒーヤ地区)の住民全員に退避命令を発令しました。国連平和維持軍によれば、イスラエルは2024年11月の停戦合意を1万回以上違反していましたが、3月上旬、イスラエルはついに停戦の終了を正式に宣言しました。
事の発端は2月28日に遡ります。イスラエルとアメリカがイランの最高指導者アリー・ハメネイー師を暗殺したことで、米・イスラエル対イランの全面戦争が始まりました。これを受けてヒズボラは1年以上ぶりにイスラエル軍施設への攻撃を再開。イスラエルはこれを口実に停戦を「終了」と宣言し、大規模な軍事作戦を展開しています。
国際移住機関(IOM)の推計では、月曜日の時点で約64,000人のレバノン人がすでに避難を余儀なくされており、その多くは2年以上も故郷に戻れていない状態です。イスラエル軍は南レバノンに数キロメートル侵攻し、2024年停戦以来すでに占領していた5地点に加えて、さらに勢力を拡大しています。
なぜ「今」この作戦なのか
ここで注目すべきは、イスラエルが選んだ「タイミング」です。ヒズボラは2024年の戦争で軍事指導部の大半を失い、長年の書記長ハサン・ナスラッラーも殺害されました。レバノン政府は同組織の軍事活動を違法と宣言し、レバノン軍は非国家武装勢力の武装解除に乗り出しています。つまり、ヒズボラが40年以上で最も弱体化した瞬間を狙った作戦だということです。
レバノンのアナリストマイケル・ヤング氏はAl Jazeeraに対し、イスラエルは「レバノンの人口地図を書き換えようとしている」と指摘します。ヒズボラの支持基盤は主に南レバノン、ベイルート南部郊外、東部ベカー高原のシーア派コミュニティです。この三つの地域から住民を強制的に追い出すことで、組織と支持母体の「つながりを断ち切る」ことが狙いだとヤング氏は分析します。
レバノン・アメリカン大学の政治学者イマード・サラメー氏は、「南レバノン、ベカーの一部、南部郊外から人々を強制的に追い出すことで、イスラエルは事実上、人口分布を作り変え、大規模な国内避難民を生み出している」と述べています。これはガザで見られたような都市の「空洞化」戦略がレバノンにも適用されていることを示唆しています。
「占領は続くのか」という問い
イスラエルが今回も最終的に撤退するのか、それとも南レバノンに留まり続けるのか――これがレバノン市民が最も恐れている問いです。
イスラエルは1982年にレバノンに侵攻し、18年間にわたって南部を占領した後、2000年にヒズボラの抵抗によって撤退を余儀なくされた歴史があります。その侵攻では約19,000人のレバノン人とパレスチナ人が命を落としました。
レバノンの政治アナリストラビフ・ダンダシュリ氏は「長期的に見れば、イスラエルが土地を保持し続けることは戦略的に利益にならない。このような形の占領は、ヒズボラのような別の抵抗組織を生み出すだけだ」と述べています。しかし同時に、たとえ住民が帰還を許されたとしても、インフラが破壊され経済が壊滅した故郷に戻る選択ができる人がどれだけいるかは別問題です。
ダンダシュリ氏が語る言葉は重く響きます。「子供を持つ人々は、すでに学校に通っている地域に留まることを選ぶかもしれない。村の外で仕事と生活を築いた人は、戻らないことを選ぶかもしれない」。
強制移住は、銃弾と同様に、コミュニティを解体する力を持っています。
記者
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