イラン政権崩壊の現実味:エリート分裂は「徐々に、そして突然に」
史上最大の抗議デモに直面するイランで、体制内クーデターの可能性が浮上。革命防衛隊内部の世代間対立が政権の命運を握る。
建国47年の歴史で最大規模の抗議デモに直面しているイランで、これまで鉄の結束を誇ってきた政権エリートに亀裂の兆しが見え始めている。数十万人規模のデモが続く中、体制維持のために団結してきた改革派と保守派の指導者たちが、ついに最高指導者ハメネイ師の権威に疑問を抱き始めた可能性がある。
表面下で進む亀裂
公式には、イラン政権は一枚岩の対応を見せている。改革派も保守派も、治安部隊による数千人の民間人殺害を公然と支持し、抗議活動を「外国の工作」として片付けている。しかし、政権内部の現実はより複雑だ。
国営テレビの虚偽報道を信じない限り、政権幹部たちは自国の体制が存亡の危機にあることを理解している。トランプ大統領がテヘラン攻撃と政権転覆を示唆していることも承知しているはずだ。そして何より、経済危機と数十年にわたる腐敗という抗議の根本原因が、頑迷で反動的な現指導部では解決不可能であることを知っている。
こうした状況下で、自らの身を守りたい政権幹部にとって、ハメネイ師の排除は合理的な選択肢となりつつある。
革命防衛隊の内部対立
クーデターが起きるとすれば、その主体はイスラム革命防衛隊(IRGC)になる可能性が高い。皮肉なことに、神権体制の最大の守護者であり、ハメネイ師統治下で最も恩恵を受けた組織が、その体制を終わらせる可能性があるのだ。
しかし、IRGCは一枚岩ではない。最も重要な分裂線は世代間の対立だ。上層部はハメネイ師の側近で占められているが、中堅幹部の多くは1979年のイスラム革命後に生まれ、イデオロギーよりも実利を重視する傾向がある。
若い世代の将校たちは、現在の危機が指導部の無能さに起因すると考えている。彼らにとって、体制の存続はハメネイ師個人への忠誠よりも重要だ。もし最高指導者が体制の障害になったと判断すれば、彼らは行動を起こすかもしれない。
3つのシナリオと日本への影響
専門家は3つの政権交代シナリオを想定している。第一は民衆革命だが、これには軍の一部が民衆側に付く必要がある。第二は外国による軍事介入だが、トランプ政権が大規模な軍事作戦を決断する可能性は不透明だ。
最も現実的なのが第三のシナリオ、体制内クーデターだ。これが起きた場合の日本への影響は深刻になる。イランは日本の原油輸入の約3%を占め、中東の地政学的安定は日本のエネルギー安全保障に直結している。
政権交代後のイランがより穏健になれば、トヨタや三菱などの日本企業にとって新たな市場機会が生まれる可能性がある。一方で、政治的混乱が長期化すれば、ホルムズ海峡の安全航行に影響が及び、日本の海運業界や製造業に打撃を与えかねない。
変化の兆候を読み解く
現時点では、クーデターの兆候は表面化していない。イラン政権は極度に疑心暗鬼で、存在しない陰謀さえ常に警戒している。しかし、実際の組織的な動きがあれば、それは「警告なしに、電光石火で」起きるだろう。
体制の崩壊は「徐々に、そして突然に」進む。経済制裁、国際的孤立、国内不安という圧力が蓄積し、ある瞬間に臨界点を超える。その時、エリートたちは生き残りをかけて行動を起こすはずだ。
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