ホルムズ海峡封鎖——世界経済は今、崖っぷちに立っている
米・イスラエルとイランの戦争が5週目に突入。UAEとバーレーンの主要アルミ施設への攻撃、ホルムズ海峡封鎖、フーシ派の参戦——日本経済と企業への影響を多角的に分析する。
日本が輸入する原油の約9割がホルムズ海峡を通る。その海峡が今、事実上封鎖されている。
米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦が5週目に入った2026年3月29日、湾岸地域では新たな局面が訪れました。イラン革命防衛隊(IRGC)はドローンとミサイルを使い、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンの主要アルミニウム製造施設を攻撃。UAEではエミレーツ・グローバル・アルミニウムが運営するアブダビの施設に「深刻な損害」が生じ、複数の負傷者が出ました。バーレーンでは世界最大級のアルミ精錬所であるアルミニウム・バーレーンの従業員2名が負傷しています。
IRGCは声明の中で、これらのアルミ施設が「米軍と関連している」と主張しましたが、具体的な根拠は示されませんでした。一方、イランはイスラエルが自国の2か所の鉄鋼生産拠点を攻撃したことへの報復だと説明しています。工業インフラを標的にした「施設対施設」の応酬が始まったことは、この戦争が新たな段階に入ったことを示しています。
「第二の前線」が開く——フーシ派と紅海
同じ3月29日、イエメンのフーシ派がイスラエルに向けてミサイルを発射し、正式に紛争に参入しました。イスラエルはミサイル2発を迎撃したと発表しています。フーシ派は2023年のガザ紛争勃発後、紅海での商船攻撃によって世界の海上輸送に深刻な打撃を与えた前歴があります。今回も同様の行動に出れば、エネルギー価格はさらに上昇する可能性があります。
現時点ですでに、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖により、石油・天然ガスの価格は急騰しています。ホルムズ海峡は世界の石油輸送量の約20%が通過する「エネルギーの咽喉部」です。日本にとってこれは単なる地政学的ニュースではありません。電気代、ガソリン代、物流コスト——生活のあらゆる場面に波及する問題です。
さらに、クウェートの国際空港のレーダーシステムがドローン15機による攻撃で大きく損傷し、オマーン南部の港湾都市サラーラでも外国人労働者が負傷するドローン攻撃が発生しました。湾岸の「安定した国々」にまで戦火が広がりつつあります。
日本企業と日本社会への現実的な影響
日本はエネルギーの海外依存度が極めて高い国です。2011年の福島原発事故以降、原子力発電の比率が大幅に低下し、液化天然ガス(LNG)や石油への依存がさらに高まりました。ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、日本のエネルギーコストは構造的に上昇し、製造業全体の競争力に影響を与えます。
トヨタや日産などの自動車メーカーは、すでに半導体不足や円安による原材料高騰に苦しんでいます。エネルギーコストの上昇はさらなる打撃となります。住友化学や三菱ケミカルなどの化学メーカーにとっては、石油由来の原料価格の高騰が直接、製品コストに跳ね返ります。
アルミニウムへの影響も見逃せません。UAEとバーレーンは世界有数のアルミ生産国であり、今回攻撃を受けた施設はその中核です。アルミは自動車、航空機、建設、電子機器など日本の主要産業に欠かせない素材です。供給が滞れば、調達コストの上昇と納期の遅延が重なります。
湾岸諸国の立場も複雑です。UAEやバーレーン、クウェートなどの国々は、自国の経済と安全を守るために米国との同盟関係に依存しながらも、イランとの地理的・経済的な近さから完全な対立を避けたいというジレンマを抱えています。「将来の和平交渉に参加する権利がある」と主張しながらも、どの陣営につくかで意見が割れているのが現状です。
なぜ「今」なのか——タイミングが示すもの
2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃から始まった一連の紛争は、ガザ、レバノン、イエメン、そしてイランへと拡大し、今や湾岸産油国の工業インフラにまで届いています。各アクターが「報復の連鎖」に入り込んでいる今、誰かが意図的に「止める」決断をしない限り、エスカレーションは続きます。
レバノンでは同日、ヘズボラ系メディアアル・マナールの記者を含む3名のジャーナリストがイスラエルの標的型攻撃で死亡しました。WHOは3月だけで南レバノンで51名の医療従事者が死亡したと報告しています。戦場は軍事施設だけでなく、民間インフラや報道機関にも及んでいます。
国際社会の反応は割れています。トランプ政権は軍事作戦を主導しながらも、外交的出口戦略が見えていないという批判を受けています。BBCのジェレミー・ボーウェン記者は「トランプは本能に基づいて戦争を進めており、それはうまくいっていない」と評しています。
記者
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