政府が匿名アカウントを監視する時代
トランプ政権下で国土安全保障省が批判的なSNSアカウントの身元特定を要求。行政召喚状の乱用が市民の表現の自由を脅かしている
5時間。批判的なメールを送った退職者のGoogleアカウントが政府に召喚されるまでにかかった時間です。
米国国土安全保障省が、トランプ政権を批判するSNSアカウントの運営者情報を技術企業に要求していることが明らかになりました。特に注目すべきは、裁判所の承認を必要としない「行政召喚状」という手法が使われていることです。
匿名アカウントが標的に
Bloombergの報道によると、国土安全保障省はペンシルベニア州で移民の権利保護活動を行う匿名Instagramアカウント「@montcowatch」の運営者情報をMetaに要求しました。このアカウントは地域のICE(移民・税関執行局)による強制捜査の情報を共有していました。
政府側の主張は、ICE職員が「ストーキング」されているという通報があったというものでした。しかし、アメリカ自由人権協会(ACLU)は「警察活動を記録し、匿名で共有することは合法で憲法修正第1条で保護されている」と反論。結果的に国土安全保障省は説明なく召喚状を撤回しました。
これは孤立した事例ではありません。少なくとも4件の類似ケースが確認されており、いずれも政府批判的なInstagramアカウントが対象となっていました。
行政召喚状の危険性
通常の司法召喚状は裁判官の承認が必要ですが、行政召喚状は政府機関が独自に発行できます。メールの内容や位置情報は取得できませんが、ログイン時間、使用デバイス、IPアドレス、クレジットカード情報まで要求可能です。
ワシントン・ポストが報じた別のケースでは、国土安全保障省の弁護士に批判的なメールを送った退職者が、5時間後にGoogleから政府召喚の通知を受けました。2週間後、連邦捜査官が自宅を訪問。捜査官自身も「法律違反はない」と認めながらの訪問でした。
企業の対応と限界
技術企業は政府要求に対して一定の抵抗を見せています。Googleは「過度に広範囲な召喚状には反対している」と述べ、実際に今回のケースでも抵抗したとしています。
Metaの対応については詳細が明かされていませんが、行政召喚状には法的強制力がないため、最終的には企業の判断に委ねられているのが現状です。
Signalのような暗号化メッセージアプリは、そもそもユーザーデータを収集していないため、召喚状に対して「提供できるデータがない」と回答しています。
日本への示唆
日本でも政府による情報収集権限の拡大が議論されています。特にサイバーセキュリティや国家安全保障の名目で、通信傍受法の改正や新たな監視権限の導入が検討される中、米国の事例は重要な参考となります。
日本企業も米国政府からの要求を受ける可能性があります。ソニーや任天堂などのゲーム会社、ソフトバンクなどの通信会社は、グローバルにサービスを展開する以上、こうした政府要求への対応方針を明確にする必要があります。
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