医師よりインフルエンサー?SNS医療情報の実態
米ピュー研究所の調査によると、アメリカ人の40%が医療・健康情報をSNSから得ている。医療不信の深層と、情報を見極めるための視点を考察する。
「お医者さんに聞いてください」——その一言が、もはや当たり前ではなくなりつつある。
アメリカ人の40%が、医療・健康に関する情報をSNSのアカウントから得ている。50歳未満に限ると、その割合は半数に達する。ピュー研究所が2026年に発表したこの調査結果は、医療情報の流通が根本から変わりつつあることを示している。
「信頼の空白」に流れ込んだインフルエンサーたち
Instagramのリールをスクロールすると、そこには混沌とした世界が広がっている。エビデンスに基づいた医学を説く医師の隣に、未承認のペプチド注射を勧める「ライフコーチ」がいる。ユング心理学と占星術を組み合わせたメンタルヘルスアカウントが、精神科医の投稿と並んで表示される。登録栄養士が慢性炎症を抑える全粒食品を推奨する動画の次には、自称「栄養士」が同じ目的でシーモスのサプリを売り込む動画が流れてくる。
こうした状況が生まれた背景には、医療への根深い不信感がある。ピュー研究所の調査は、約12,800のインフルエンサーアカウント(フォロワー10万人以上)と5,000人のアメリカ人成人を対象にした大規模なものだ。その結果が浮き彫りにしたのは、「情報の問題」ではなく「信頼の問題」だった。
公衆衛生科学者でポッドキャスト「Unbiased Science」の共同ホストを務めるジェシカ・スタイアー氏はこう語る。「情報が不足しているのではなく、信頼が失われているのです。医療の世界には、上から目線で、とても権威主義的な態度があります。それが自分たちの首を絞めていると思います」
パンデミックがこの流れを加速させた。外出自粛で家にこもった人々はスマートフォンを手放せず、政府の専門家への疑念が高まる中、独自の情報源を求めてSNSに向かった。そこに待ち構えていたのが、ロバート・F・ケネディ・ジュニア現米国保健福祉長官のような人物——自らの政治的アジェンダを押し進め、しばしば「何かを売ろうとする」人々だった。
誰がSNS医療情報を求めるのか
興味深いのは、SNS医療情報の主な消費者が「情報弱者の高齢者」ではないという点だ。65歳以上の人々は実際には最も懐疑的で、36%が「SNSの健康情報をほとんど、あるいは全く信用しない」と回答している。一方、18〜29歳の若者は最も影響を受けやすく、36%が「SNSインフルエンサーの情報を見た後、自分の健康についてより心配になる」と答えた。
医療保険のない人々もSNSへの依存度が高い。保険未加入者の53%がSNSやポッドキャストから健康情報を得ているのに対し、保険加入者では38%にとどまる。シカゴ・イリノイ大学の疫学者で、Instagramで10万人以上のフォロワーを持つカトリーン・ウォレス氏(通称「Dr.kat」)はこう指摘する。「私はこうした製品を買う人々を非難しません。彼らはシステムの犠牲者です。従来の医療へのアクセスがないから、こうした情報に頼るしかないのです」
人種・民族による差異も顕著だ。ヒスパニック系(47%)、黒人(44%)のアメリカ人は、白人(35%)に比べてSNS健康情報への依存度が高い。これは単なる統計ではない。タスキギー梅毒実験に代表される歴史的な医療不正義、そして今日も続く診察室での無意識の偏見——こうした構造的な問題が、特定のコミュニティを医療機関から遠ざけているのだ。
インフルエンサーが売るのは「資格」ではなく「共感」
健康・ウェルネスインフルエンサーの41%が「医療専門家としての経歴がある」と主張しているが、従来の医療資格を持つのはそのうち17%に過ぎない。アカウント全体の16%は、いかなる資格も主張していない。
インフルエンサーの64%は女性で、男性(9%)に比べて自身の生活体験を前面に出す傾向が強い(16%)。「ADHDのお母さん」「ルーパス患者」といった自己紹介が、専門資格の代わりに信頼の根拠となる。
この現象が示すのは、人々が求めているのは「正確な情報」だけでなく「個人的なつながり」だということだ。スタイアー氏はこう説明する。「逸話はそれ自体では証拠になりません。でも逸話は、情報の受け手との関係を築き、情報を心に届かせる助けになるのです」
しかし問題は患者だけにとどまらない。ベイラー医科大学救急医・准教授のセドリック・ダーク氏は、医学生が同じSNSソースを使い、それが誤った情報だと気づかない場面をすでに救急室で目撃しているという。「私が最も心配しているのは、私たちの医学生が患者と同じ情報源を使い、正しい情報をどこで見つければいいかわからない状況です」
日本社会にとっての意味
日本でも状況は無縁ではない。厚生労働省の調査では、健康情報をSNSで検索する日本人は年々増加しており、特に若い世代でその傾向が顕著だ。YouTubeやX(旧Twitter)では、「医師監修」を謳いながら実態が不透明なアカウントが多数存在する。
日本の場合、アメリカとは異なる文脈がある。国民皆保険制度により医療へのアクセスは比較的平等だが、一方で「先生に遠慮して聞けない」という文化的な遠慮が、SNS情報への依存を生む可能性がある。また、急速な高齢化社会において、医師不足が深刻な地方では、SNSが事実上の「かかりつけ医」になりうる。
ピュー研究所の報告が提示するSNS情報を見極めるための指針は、日本でも有効だ。①資格を確認する(「Dr.〇〇」の肩書きの実態を調べる)、②利益相反に注意する(商品を売っているなら、その動機を考える)、③リスクの大きさを考える(サーディンを食べることと、未検証の注射を打つことは全く異なる)。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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