批判ツイートで位置情報を要求——米国の「関税召喚状」が国境を越えた
米国土安全保障省がカナダ人男性のGoogle位置情報をトランプ政権批判の投稿を理由に要求。司法審査なしの行政召喚状が、デジタル時代の国境と表現の自由をどう脅かすか。
オンラインに投稿した文章が、国境を越えて政府の監視対象になる——そんな時代が、すでに始まっているかもしれません。
何が起きたのか
今年1月、米ミネアポリスで連邦移民捜査官がレニー・グッドとアレックス・プレッティという2人の市民を射殺する事件が起きました。この事件に対してオンラインで批判的な投稿をしたカナダ人男性に対し、米国土安全保障省(DHS)がGoogleに対して男性の位置情報、アクティビティログ、その他の個人識別情報の提出を求める「カスタムズ召喚状(customs summons)」を発行していたことが明らかになりました。
問題の核心は、この男性が10年以上米国に入国していないという点です。米国市民でも永住者でもなく、米国の土を踏んでいないカナダ人が、米国政府の調査対象になったのです。
男性を代理する米国自由人権協会(ACLU)のシニアスタッフ弁護士、マイケル・パールロフ氏は「政府がクライアントの居住地について何を把握しているかは不明だが、確認しようとさえしていないことは明らかだ」と述べています。
カスタムズ召喚状とは、本来は輸出入取引の調査や関税徴収を目的とした行政上の文書で、1930年制定の関税法に基づくものです。元米税関・国境警備局(CBP)首席顧問補のクリス・ダンカン氏は「この法律はあくまで輸入申告の正確性や関税・税金の納付義務に関するものだ。それ以外の目的に使われることは想定されていなかった」と指摘します。
なぜこれが深刻なのか
この召喚状が持つ最も重大な特徴は、裁判官や大陪審の審査を経ないという点です。つまり、政府機関が独断でテック企業にユーザー情報の提出を要求できる仕組みになっています。
Googleは2月9日、男性に召喚状の存在を通知しました。召喚状には「無期限に存在を開示しないよう」求める文言が含まれていましたが、Googleはそれに従いませんでした。男性は最初、通知を冗談かフィッシング詐欺と思ったと語っています。
召喚状が要求した情報の時間的範囲は2025年9月1日から2026年2月4日まで。男性の弁護士はこの期間中、依頼人が米国との間でいかなる輸出入取引も行っていないと主張しています。代わりに召喚状が実際に照準を合わせていたのは、男性のオンライン活動——特に移民捜査官による射殺事件を批判する投稿——だったと弁護士たちは主張します。
召喚状には「脅迫的または嫌がらせ的な言語による利用規約違反やアカウント停止の履歴」に関する記録の提出も求められていました。しかし男性の弁護士は、投稿は「情熱的で時に率直ではあったが、脅迫や暴力の扇動は一切含まれていない」と反論しています。
パールロフ氏はより本質的な問題を指摘します。「大手テック企業が米国に拠点を置いているという地理的事実を利用して、本来なら管轄外の情報を取得しようとしている」というのです。
より大きな文脈——これは孤立した事例ではない
このケースは氷山の一角に過ぎない可能性があります。ニューヨーク・タイムズは今年2月、Google、Reddit、Discord、Metaが過去6か月間に数百件の行政召喚状を受け取っていたと報じました。
DHSによるカスタムズ召喚状の濫用は今に始まったことではありません。WIREDの調査によると、2016年から2022年8月中旬までの間に、召喚状は17万件以上発行されており、最も多く受け取ったのは大手テック企業と通信会社でした。
2017年には、Twitter(現X)が匿名アカウントの身元開示を求めるDHSの召喚状を違法として提訴。DHSが要求を撤回したことで訴訟は取り下げられ、裁判所がこの慣行の合法性を判断する機会は失われました。
その後、DHSの監察総監室(OIG)が調査を実施。CBPの職業責任局が発行した召喚状の約5件に1件が、同局自身の内部規定に違反していたことが判明しています。
ダンカン氏は「職権を乱用すれば、正当な活動すべての信頼性が損なわれる。それが最も悲しいことだ」と語ります。
パールロフ氏の言葉はさらに重く響きます。「かつて米国は他国に対し、自国民を外国の抑圧から守る方法を指導していた。今や他国が米国について同じことをしなければならないかもしれない」。
このケースは現在、ACLUがDHS長官マークウェイン・マリン氏を被告として提訴した訴訟の中で争われています。デジタル権利団体の電子フロンティア財団(EFF)も4月、DHSとICEが発行した召喚状の総数に関する記録開示を求めて提訴しています。
日本にとって、この問題は遠い話ではありません。ソニー、トヨタ、任天堂など多くの日本企業が米国のクラウドサービスやプラットフォームを利用しており、その従業員や関係者の情報が理論上、同様の行政召喚状の対象になり得ます。また、在米日本人コミュニティや、米国のSNSで政治的発言をする日本在住者にとっても、無関係とは言い切れない問題です。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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