中央アジア5カ国の苦悩:米イ・イラン衝突で露呈した「綱渡り外交」
米イスラエルとイランの軍事衝突で、中央アジア諸国が見せた慎重な反応。トランプ政権との接近とイランとの経済関係の間で揺れる複雑な外交バランス
2万2000人。これは現在中東地域で働くキルギス人の数だ。200人はイランとイスラエルにいる。米国とイスラエルがイランを攻撃し、イランが報復した今、彼らの安全は誰が保証するのか。
トランプの「平和の大統領」発言から1週間後の現実
カザフスタンとウズベキスタンの大統領は、ワシントンがイランを攻撃するわずか1週間前、トランプ米大統領と「平和委員会」の初会合に参加していた。トランプを「平和の大統領」と呼んだ記録が残る中で、中東が破滅的な紛争に突入する皮肉な展開となった。
2月末から3月初旬にかけて、中央アジア5カ国の外務省が相次いで声明を発表した。しかし、どの声明も興味深い共通点がある:米国とイスラエルがイランに奇襲攻撃を仕掛け、イランが報復したという「明白な事実」に言及していないことだ。
ウズベキスタン外務省は「軍事・政治的だけでなく、人道的性質の予測困難な結果を招く危険なエスカレーションにつながる可能性がある更なる措置を控えるよう」求めた。キルギス外務省も同様に、国連憲章と国際法に基づく平和的解決を呼びかけた。
カザフスタンだけが踏み込んだ理由
興味深いのはカザフスタンの反応だ。同国外務省は3月2日、イランの「子どもを含む民間人の死者、およびイスラム共和国の最高指導部メンバーの死」に哀悼の意を表した。さらに「イランとの戦争に参加していないアラブ諸国」の民間施設への攻撃に遺憾の意を示した。
なぜカザフスタンだけがより具体的な言及をしたのか。同国は中央アジア最大の経済規模を持ち、より独立した外交政策を展開する余地があるからかもしれない。
トルクメニスタンは永世中立国の立場を引用し、「すべての複雑な国際問題の解決は国連憲章と国際法に基づき、政治・外交手段のみを用いて実行されなければならない」と述べた。
経済利益vs安全保障:中央アジアのジレンマ
中央アジア諸国がこうした慎重な姿勢を取る背景には、複雑な利害関係がある。一方でトランプ政権との関係強化を図りながら、他方でイランとの長年の経済関係も維持したいのだ。
イランの港湾は、内陸国である中央アジア諸国にとって重要な貿易ルートの選択肢だった。カザフスタンのトカエフ大統領は2022年にイランを国賓訪問し、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領は2023年に訪問した。タジキスタンのラフモン大統領は2024年7月に実務訪問を行い、その2カ月前にはイランの故ライシ大統領の葬儀に参列していた。
特にタジキスタンとイランの関係は、ペルシア語系の共通文化と言語を基盤に、他の中央アジア諸国より深く根ざしている。ラフモン大統領がイランのペゼシュキアン大統領にハメネイ最高指導者の死去に関する弔電を送ったのも、この文脈で理解できる。
自国民保護という現実的課題
外交的バランス以上に切迫しているのが、中東地域にいる自国民の安全確保だ。キルギスには中東地域に約2万2000人の国民がおり、主にサウジアラビアとUAEにいる。イランとイスラエルには約200人がいるという。
キルギス外務省は、UAEとサウジアラビアの一部ホテルや航空会社が政府の支援要請を無視していると不満を表明した。現地の一部市民からは「領事館は重要な支援を提供しておらず、我々は自力で対処するしかない」との声も上がっている。
カザフスタンは湾岸諸国に4000人以上の国民が団体旅行で滞在していると発表。ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領は、特にサウジアラビアに多数いる自国民の大規模避難を命じたと報じられている。
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