AIが変えるビットコインの役割:投機から「インフラ」へ
ブラックロックのデジタル資産責任者が語る、AIとビットコインの共生関係。機関投資家はなぜ今、アルトコインを見限り、AIとビットコインの交差点に注目するのか。
世界最大の資産運用会社が、暗号資産の未来は「新しいトークンの数」ではなく「AI」にあると言い始めた。
2026年3月24日、ニューヨークで開催されたDigital Asset Summitで、ブラックロックのデジタル資産責任者であるロビー・ミッチニック氏は、機関投資家の間で起きている静かな変化を明確に言語化しました。「トークンの大多数はナンセンスだ」——その一言が、現在の機関投資家の本音を代弁しています。
ビットコインだけが生き残る理由
暗号資産市場には現在、数万種類ものトークンが存在します。しかしミッチニック氏によれば、上位トークンの入れ替わりは「非常に激しく」、長期的な地位を維持できているのはビットコイン(現在価格:$70,957)とイーサリアムのみだといいます。
ブラックロックのクライアント——年金基金、ソブリン・ウェルス・ファンド、大手機関——は、幅広いアルトコインへの分散投資に関心を示さなくなっています。代わりに、ビットコインとイーサリアムに集中した、より保守的なポートフォリオ構成を選んでいます。これは日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のような機関が将来的にデジタル資産を検討する際の方向性とも重なります。
「コンピューター・ネイティブなお金」という新しい定義
ここでミッチニック氏が提示した視点が興味深いです。彼は暗号資産を投機的な資産クラスとしてではなく、AIエコノミーのインフラとして再定義しました。
「AIエージェントがFedwireやSWIFTを使うとは考えにくい」と彼は述べました。AIは「コンピューター・ネイティブなデータと知識」であり、暗号資産は「コンピューター・ネイティブなお金」である——この二つの間には、自然な共生関係があるというのです。
この論理は、現実の動きとも一致しています。Hut 8、Core Scientific、Irenといった上場ビットコインマイナーは、データセンターをAI向けの高性能コンピューティングに転用し始めています。マイニング収益の不安定さに対し、AIワークロードはより安定した収益源となり得るからです。
日本企業との関連で言えば、ソフトバンクがAIインフラへの大規模投資を続ける中、ビットコインマイナーのAIシフトは一つの産業再編の予兆とも見えます。
「不確実性の時代」のビットコイン
ミッチニック氏はさらに、AIが産業構造を変えていく過程で生まれる不確実性の中で、ビットコインが「分散投資先」として機能しうると主張しました。これは従来の「金の代替」という文脈とは少し異なるフレーミングです。
AIが多くの産業を変革し、既存のビジネスモデルが揺らぐ時代——その変化から相対的に独立した資産としてのビットコイン、という位置づけです。日本のような技術立国にとって、この視点は特に考えさせられるものがあります。AIによる自動化が製造業や金融業に波及する中、資産配分の考え方自体が問い直されているからです。
各ステークホルダーの視点
機関投資家の視点では、今回の発言は「アルトコインへの投資を正当化しにくくなった」というシグナルとして受け取られるでしょう。ブラックロックほどの影響力を持つ機関が「大多数はナンセンス」と言えば、それは業界全体の資金フローに影響します。
アルトコイン支持者の視点からは、これはブラックロックの保守的な姿勢を反映しているに過ぎず、DeFiやWeb3の革新性を見落としているという反論があります。機関投資家が評価しないからといって、技術的価値がないわけではない、という主張です。
日本の規制当局の視点では、金融庁が暗号資産の規制整備を進める中、機関投資家がビットコインとイーサリアムに集中するという動きは、規制の優先順位付けにも影響を与えるかもしれません。
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