戦争中でも$71,000——ビットコインは「有事の金」になったのか
中東戦争が激化する中、ビットコインは週間4.2%上昇し$71,000を維持。イランのホルムズ海峡封鎖とFRB会合が次の試練となる。暗号資産市場の新たな耐性と残るリスクを読み解く。
2週間前、誰もが「戦争が始まれば暗号資産は暴落する」と思っていた。
現実は違った。
ビットコインは2026年3月14日(土)朝、$71,000で取引されている。米軍がイランの主要原油輸出施設であるホルグ島を爆撃した直後でさえ、下落幅はわずか3.5%にとどまり、すぐに下げ止まった。中東戦争が始まってから2週間、ビットコインは開戦前の水準を上回ったまま推移している。
「売りのパターン」が崩れた理由
数字を並べると、その異変がよくわかる。過去7日間でビットコインは4.2%上昇した。イーサリアムは5.5%高の$2,090。ドージコインは5%、ソラナは4.2%高の$88、BNBは4.5%高の$655。主要トークンはすべて週間プラスで終えた——戦況が緩和ではなく悪化しているにもかかわらず。
なぜこうなったのか。開戦直後、市場は「最悪のシナリオ」を価格に織り込めなかった。だからヘッドラインが出るたびに過剰反応した。しかし2週間が経ち、トレーダーたちはある「型」を学習した。空爆→原油急騰→ビットコイン一時下落→回復、というサイクルが繰り返されるうちに、「ヘッドラインで売る」反射が薄れていったのだ。
ただし、楽観は禁物だ。$73,000〜$74,000のレジスタンス(上値抵抗)は2週間で4度跳ね返している。金曜日には一時$73,838まで上昇したが、トランプ大統領がホルグ島への攻撃を示唆するTruth Social投稿を出した直後に急落した。過去24時間の清算額は$3億7,100万ドルに達し、上昇局面で踏み上げられた売り方と、急落で焼かれた買い方の両方が市場から退場した。
「もし石油インフラを叩けば」——新たな変数
トランプ大統領の発言は、市場に新たなリスク変数を持ち込んだ。彼は「礼儀のために石油インフラは見逃した」と述べる一方、イランがホルムズ海峡の封鎖を続けるなら「即座に再考する」と警告した。これに対しイランは、エネルギーインフラへの攻撃があれば米国関連施設への報復を行うと応じた。48時間前には存在しなかった条件付きエスカレーション脅威が、今や市場の頭上に浮かんでいる。
IEA(国際エネルギー機関)はすでに今回の供給混乱を「史上最大」と表現している。もし石油インフラが実際に標的になれば、原油価格は$100を大きく超え、インフレ再燃シナリオが現実味を帯びる。
そこで焦点となるのが、3月17〜18日に予定されるFRB(米連邦準備制度理事会)の会合だ。CMEのFedWatchツールでは依然として95%以上の確率で金利据え置き(3.5〜3.75%)が織り込まれている。しかし、パウエル議長の記者会見で「利上げ再開」の可能性が少しでも示唆されれば、リスク資産全般——暗号資産も含めて——に強い下押し圧力がかかる。5ヶ月間「利下げ」を織り込み続けてきた市場にとって、それは単なる方針転換ではなく、前提の崩壊を意味する。
日本の投資家にとって何を意味するか
日本の個人投資家にとって、この状況は二重の意味で注目に値する。
第一に、ビットコインが「有事に売られる資産」から「有事でも保たれる資産」へと性質を変えつつある可能性だ。かつての暗号資産はリスクオフ局面で最初に売られた。しかし今回の動きは、少なくとも一部の投資家がビットコインを金(ゴールド)に近い「価値保存手段」として扱い始めていることを示唆している。
第二に、原油高の影響だ。日本はエネルギーの大部分を輸入に依存しており、原油が$100を超えて定着すれば、企業コストの上昇と円安圧力が重なる可能性がある。トヨタやソニーのような輸出企業は短期的に円安の恩恵を受けるかもしれないが、エネルギーコストの上昇は製造業全体に重くのしかかる。日銀が利上げ軌道にある中、FRBが「スタグフレーション」を警戒して動けない状況になれば、日米金利差の縮小シナリオにも影響が出る。
もっとも、暗号資産市場に慎重な見方も根強い。「戦争への耐性」が証明されたように見えても、それは2週間という短い時間軸の話だ。紛争が長期化し、原油供給の混乱が構造的になれば、リスク資産全体が改めて試される局面が来る可能性は十分にある。
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