「デスクトップ核融合」で変わるエネルギーの未来
スタートアップAvalanche Energyが9cm径の小型核融合炉で2900万ドル調達。巨大施設に頼らない「デスクトップ核融合」が業界の常識を覆す可能性とは。
核融合といえば、巨大な施設と数十億ドルの投資が必要な「未来の技術」というイメージが強い。しかし、Avalanche Energyの共同創設者兼CEO、ロビン・ラングトリー氏は全く違うアプローチを取っている。彼らが開発しているのは、直径わずか9センチメートルの「デスクトップ核融合炉」だ。
同社は先日、R.A. Capital Management主導で2900万ドルの資金調達を完了した。これまでの累計調達額は8000万ドル。核融合業界では比較的小規模だが、その背景には従来とは根本的に異なる戦略がある。
「小さく、速く」が生む革新
「小さなサイズを活用して素早く学習し、素早く反復する」とラングトリー氏は語る。Blue Originで宇宙技術を学んだ彼は、SpaceXの「ニュースペース」アプローチを核融合に応用している。
従来の核融合企業は、Commonwealth Fusion Systemsのような巨大なトカマク型装置や、強力なレーザーで燃料ペレットを圧縮する方式を採用している。対照的に、Avalancheは超高電圧の電流を使ってプラズマ粒子を電極の周りに軌道運動させ、軌道が収束して粒子が加速されることで核融合を起こす仕組みだ。
この小型化により、同社は「週に2回」という驚異的なペースで実験を繰り返している。巨大な装置では到底不可能な頻度だ。
日本企業への示唆
注目すべきは、投資家にトヨタ・ベンチャーズが名を連ねていることだ。自動車業界では電動化が進む中、核融合技術は次世代の動力源として期待されている。
Avalancheの次期バージョンは直径25センチメートルに拡大され、1メガワットの出力を目指す。これは一般家庭約1000世帯分の電力に相当する。2027年までに同社のFusionWERX施設では、核融合燃料として重要な三重水素(トリチウム)を扱う許可を取得予定だ。
日本では、JT-60SAのような大型核融合実験装置への投資が続いているが、Avalancheのような小型・高頻度実験アプローチは、日本の製造業が得意とする「改善」の文化と親和性が高い。実際、精密加工技術や材料科学で世界をリードする日本企業にとって、核融合の小型化は新たなビジネス機会となる可能性がある。
2027年が分水嶺に
ラングトリー氏は、投入エネルギーより多くのエネルギーを取り出す「Q>1」の達成時期について明言を避けたが、「2027年から2029年にかけて、核融合分野で非常にエキサイティングなことが起こる」と予測している。
Sam Altmanが支援するHelionやCommonwealth Fusion Systemsなど、他の有力企業も同様の時期を目標としており、核融合商用化競争は佳境を迎えている。
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