「安全資産」米国債の神話が揺らぐ時代
トランプ政権下で米国債への信頼が揺らぎ、デンマーク年金基金が売却を検討。金や中国資産に資金が流れる中、日本の投資戦略はどう変わるべきか。
数十年間、世界の投資家にとって「最も安全な資産」とされてきた米国債。しかし、2026年1月のある出来事が、この常識を根底から揺るがそうとしています。
デンマークの教育関係者向け年金基金アカデミカーペンションが、米国債からの投資引き揚げを発表したのです。きっかけはドナルド・トランプ大統領が、グリーンランドの「強制取得」に反対するデンマークを含む8つの欧州諸国に対して二桁台の関税を課すと脅迫したことでした。
「安全神話」に亀裂が入った瞬間
米国債は長らく、世界最大の流動性と市場の深さを誇る究極の安全資産でした。数十兆ドル規模の市場において、デンマークの年金基金の撤退は確かに「大海の一滴」に過ぎません。
しかし、フランスの投資銀行ナティクシスのアジア太平洋地域チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア=エレーロ氏は警告します。「トランプは米国資産に政治的リスクを注入している」。
この動きは決して孤立した現象ではありません。グリーンランドのSISA年金基金も米国資産からの撤退を検討していると報じられています。さらに注目すべきは、これらの動きが中国や新興国による脱ドル化の取り組みと重なっていることです。
日本への波及効果を読み解く
日本は世界最大の米国債保有国の一つです。約1.1兆ドル(約170兆円)を保有する日本にとって、この変化は決して対岸の火事ではありません。
日本銀行や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの機関投資家は、これまで米国債を安定的な運用先として重視してきました。しかし、米国の政治的不安定性が高まれば、運用戦略の根本的な見直しが必要になる可能性があります。
実際、市場では既に変化の兆しが見えています。金価格は過去最高値圏で推移し、一部の投資家は中国の人民元建て資産への関心を高めています。日本の投資家も、従来の「米国一極集中」から、より分散されたポートフォリオへの転換を迫られるかもしれません。
新たな「安全資産」を求める世界
興味深いのは、米国債への信頼が揺らぐ中で、投資家たちがどこに資金を向けているかです。
金は最も古典的な選択肢です。地政学的リスクが高まるたびに、「有事の金」として注目を集めてきました。また、中国の国債や、ユーロ圏の国債など、代替的な政府債券への関心も高まっています。
しかし、これらの選択肢にもそれぞれ課題があります。金は価格変動が激しく、中国資産には規制リスクが伴います。ユーロ圏も政治的な不安定要素を抱えています。
結果として、投資家は「完璧な安全資産」が存在しない世界で、リスクを分散させながら運用する新たな戦略を模索しています。
記者
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