トランプ氏、「ターボがん」提唱の疫学者を米がん対策トップに任命か。世界に広がる科学への懸念

トランプ前大統領が、物議を醸す「ターボがん」説の提唱者を米がん対策トップに任命か。科学界に衝撃が走り、世界中から懸念の声が上がっています。その背景と海外の反応を分析します。

衝撃の任命、SNSでバイラル化

ドナルド・トランプ前大統領が、物議を醸す疫学者を米国のがん対策を監督する重要ポスト「大統領がん諮問委員会」の委員長に任命したとのニュースが、世界中のSNSやメディアを駆け巡っています。任命されたとされるハーヴェイ・リッシュ氏は、新型コロナウイルスのワクチンが「ターボがん」を引き起こす可能性を示唆し、イベルメクチンなどの未承認薬を推奨してきた人物。この人事が、なぜこれほど大きな波紋を広げているのでしょうか？その背景と海外の反応を深く掘り下げます。

なぜこのニュースはこれほど話題なのか？

科学への挑戦：COVID-19ワクチンと「ターボがん」を結びつける、科学的根拠に乏しい主張をする人物が、国家のがん対策のトップに就くという衝撃。
疑似科学の懸念：イベルメクチンなど、効果が証明されていない治療法を過去に推奨してきた人物が、連邦レベルのがん研究に影響力を持つことへの恐怖。
政治と医療の境界線：命に関わるがん研究の分野にまで、政治的なイデオロギーや陰謀論が持ち込まれることへの深刻な懸念。
異例の発表方法：ホワイトハウスからの正式発表がなく、リッシュ氏本人のX（旧Twitter）やエール大学のプロフィールで言及されるという異例のプロセスも憶測を呼んでいます。

詳細解説：一体何が起きているのか？

任命されたハーヴェイ・リッシュ氏とは？

ハーヴェイ・リッシュ氏は、エール大学公衆衛生大学院の名誉教授です。著名な疫学者である一方で、パンデミック中には科学的主流から外れた見解を主張し、注目を集めました。

未承認薬の推奨：彼はヒドロキシクロロキンやイベルメクチンをCOVID-19の治療薬として早期から推奨。しかし、これらの薬の効果は、その後の大規模な臨床試験で否定されています。
「ターボがん」への言及：2023年には、mRNAワクチンが攻撃的ながん、いわゆる「ターボがん」を引き起こす可能性について推測。この「ターボがん」という言葉は、科学的根拠がないまま反ワクチン派の間で広まった用語であり、米国国立がん研究所（NCI）は「ワクチンががんを引き起こしたり、再発させたり、進行させたりするという証拠はない」と明確に否定しています。

「大統領がん諮問委員会」の重要性

この委員会は、米国のがん対策全般の進捗を監視し、大統領に進言する重要な役割を担っています。委員長の任命は、国のがん研究や治療の方向性に大きな影響を与える可能性があります。科学界の専門家たちは、リッシュ氏の就任が、陰謀論や疑似科学を国の政策に注入し、がん患者にとって「災害」となりかねないと警鐘を鳴らしています。

世界の反応：懸念、怒り、そして皮肉

このニュースは、世界中の医療専門家、科学者、そして一般市民から様々な反応を引き起こしています。

「彼をがん対策のトップにするなんて、放火犯を消防署長にするようなものだ。」（米国の医師、Xより）
「これはがん患者とその家族への裏切り行為だ。科学的根拠に基づいた医療が、イデオロギーによって脅かされている。」（欧州のがん研究者、LinkedInより）
「トランプは本当に『専門家』という存在が嫌いなんだな。次は地球平面説の信者をNASAの長官に任命するんじゃないか？」（英国の一般ユーザー、Redditより）
「素晴らしい選択だ！大手製薬会社の言いなりにならない人物が必要だった。リッシュ博士は真実を語る勇気を持っている。」（米国のトランプ支持者、Telegramより）
「日本も他人事ではない。科学に対する不信感が政治に利用されると、公衆衛生はあっという間に崩壊する。」（日本の公衆衛生専門家、Xより）
「私の母はステージ4のがんと闘っている。希望であるはずの最先端研究が、このような人物によって歪められるかもしれないと思うと、恐怖で言葉が出ない。」（カナダの一般ユーザー、Facebookより）

PRISM Insight：これは単なる人事ではない、社会の分断を映す鏡だ

今回の任命騒動が示す最も深刻な問題は、これが単なる一人の人事ではないという点です。これは、現代社会が直面する「真実」の分断と、専門知識への攻撃という根深いトレンドの象徴と言えます。

パンデミックを経て、科学的な事実でさえも政治的信条によって取捨選択される「信念の両極化」が加速しました。ワクチンや公衆衛生対策が、個人のアイデンティティを表明する踏み絵のようになったのです。その分断の波が、今や「がん」という、誰もが恐れ、党派を超えて克服すべき人類共通の敵との戦いにまで及ぼうとしています。

この一件は、米国だけの問題ではありません。科学的コンセンサスよりも個人の意見やSNS上の言説が重んじられる風潮は、世界中で見られます。この任命が正式に確定すれば、米国の科学的リーダーシップの失墜を招くだけでなく、世界中のがん研究や国際協力に悪影響を及ぼす可能性があります。私たちは、情報を見極め、証拠に基づいた政策決定を求める声を、より一層強く上げ続ける必要があるでしょう。科学と理性の砦が、今、試されています。