「修理する権利」2025年の大勝利:米3州で法制化も、テック企業の静かなる抵抗は続く
2025年、「修理する権利」運動が米3州での法制化という大きな勝利を収めました。しかし、AppleやGoogleなどテック企業の「悪意あるコンプライアンス」やソフトウェアによる制限は続いており、戦いは新たな局面を迎えています。
あなたが購入したその製品、本当にあなたの所有物ですか? この問いが、2025年のテクノロジー業界を象徴するテーマとなりました。「修理する権利」を求める運動が大きな節目を迎えたのです。米国では今年、新たに3つの州で、消費者がメーカーの承認なしに自身の電子機器を修理することを認める法律が成立しました。これは、何十年にもわたりロビー活動を続けてきた消費者団体にとって大きな前進です。
草の根から生まれた法制化の波
今年可決された州法は、これまでの停滞を打ち破るものでした。特にテキサス州では、法案が上下両院で全会一致で可決されるなど、党派を超えた幅広い支持を集めたことが注目されます。この運動は、環境保護の観点からも重要視されています。修理が容易になれば、人々は壊れた製品を埋立地に捨てるのではなく、長く使い続ける可能性が高まるからです。米国公益研究グループ(U.S. PIRG)のネイサン・プロクター氏は、「製品購入後は、メーカーが修理を独占することで競争が失われる」と指摘し、独占的な修理市場の問題点を明らかにしました。
テック企業の「悪意あるコンプライアンス」
法的な圧力が高まる中、AppleやGoogleといった大手企業も、しぶしぶながら顧客向けの自己修理オプションを提供し始めています。しかし、修理情報サイトiFixitのCEO、カイル・ウィーンズ氏によれば、多くの企業は「悪意あるコンプライアンス」を示しているといいます。具体的には、修理マニュアルを意図的に分かりにくくしたり、特定の州の顧客にしか修理ツールを提供しないといった手口です。
問題の核心には、ソフトウェアによるハードウェアの制限、「パーツペアリング」と呼ばれる手法があります。これは、メーカー以外の第三者が修理や部品交換を行うことをソフトウェア的にブロックするもので、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)1201条がその法的根拠として利用されることがあります。このため、運動の次の目標は同条項の改正にあります。
スマホからトラクター、軍事装備まで
この問題は、単にスマートフォンの画面割れにとどまりません。農家は農業機械メーカーのジョンディア社を相手に、トラクターを自分で修理する権利をめぐって長年争っており、連邦取引委員会(FTC)が同社を提訴する事態にまで発展しました。さらに、軍の現場でも問題は深刻です。2026年度の米国防授権法(NDAA)から、兵士が自らの装備を修理する権利を認める条項が削除されたことは、この戦いがまだ道半ばであることを示しています。
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