米韓同盟の再定義:韓国が求める戦時作戦統制権、その狙いと米国の思惑
韓国が長年の懸案である戦時作戦統制権(OPCON)の返還を求める中、米国はこれを容認する姿勢を見せている。米中対立を背景に、米韓同盟の力学はどう変化するのか、その深層を分析する。
握手は交わしたが、拳は握ったままだ。米韓同盟は今、静かながらも重大な転換点を迎えています。韓国が長年の懸案であった戦時作戦統制権(OPCON)の返還を求める一方、米国のトランプ政権はこれを容認する姿勢を見せています。これは単なる指揮権の問題ではなく、激化する米中対立を背景とした東アジアの安全保障力学の変化を象徴しています。
「自主国防」への道
韓国のイ・ジェミョン大統領政権は、2030年の任期満了までにOPCON返還を目指す方針を明確にしています。戦時作戦統制権とは、朝鮮半島有事の際に米韓連合軍を指揮する権限のことで、現在は米軍大将がその任にあります。返還が実現すれば、韓国軍大将が連合軍を率いることになり、同盟の指揮系統が大きく変わります。この動きは、1950-53年の朝鮮戦争以来、米国に依存してきた安全保障体制からの、より大きな自立を追求する韓国の姿勢を反映したものです。
先月ソウルで行われた会談で、韓国のアン・ギュベク国防部長官と米国のピート・ヘグセス国防長官は、返還に必要な条件の履行を「迅速化」するロードマップの策定に合意したと発表しました。これは、両国間の協議が前向きに進んでいることを示唆しています。
米国の思惑:対中国戦略と負担の共有
一見、同盟のジュニアパートナーによる自主権拡大の追求は緊張の火種になりかねませんが、米国はむしろ韓国の能力向上を促しているように見えます。アナリストらは、その背景には台頭する中国への対抗という米国の戦略的判断があると指摘します。仁荷大学のナム・チャンヒ教授は聯合ニュースに対し、「米国は、韓国の能力強化によって中国を牽制する利益の方が、韓国の自主権拡大に伴うリスクを上回ると考えている」と分析しています。
また、ドナルド・トランプ大統領は、10月下旬の首脳会談で韓国の原子力潜水艦建造計画への支持を表明しました。これも、韓国が戦略兵器を保有することで、中国の脅威への対処に貢献することを期待する米国の意図の表れと見られています。一方で、こうした支持は韓国による3500億ドル規模の対米投資と引き換えであったとの見方もあり、トランプ大統領のディールメーカーとしての一面も指摘されています。
同盟の結束への懸念
しかし、すべての関係者が楽観的なわけではありません。在韓米軍司令官のザビエル・ブランソン大将は、OPCON返還について「特定の時期よりも相互に合意した条件を遵守することが重要だ」と述べ、慎重な姿勢を崩していません。また、元駐韓米国大使のフィリップ・ゴールドバーグ氏は、韓国の自主権拡大が長期的には「より大きな分離」につながる可能性を警告しており、同盟の結束に影響を与えかねないとの懸念も浮上しています。
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