映画『ハムネット』が描くシェイクスピアの新たな姿：文豪の謎に迫る6つの映画作品

なぜ私たちは、400年以上も前の劇作家ウィリアム・シェイクスピアにこれほど惹きつけられるのでしょうか？ 確かな伝記的証拠がほとんど残っていないにもかかわらず、彼の人生を解き明かそうとする映画は後を絶ちません。最新作であるクロエ・ジャオ監督の『ハムネット』(2025年)は、彼を「天才」として神話化するのではなく、悲しみにくれる夫であり父親として描くことで、新たな視点を提示しています。

天才の人間的側面を描く試み

映画界は長年、シェイクスピアを単なる劇作家としてではなく、解決すべき「問題」として捉えてきました。マギー・オファレルのベストセラー小説を原作とする『ハムネット』は、その問いに正面から向き合います。この作品が焦点を当てるのは、彼の文学的偉業よりも、息子の死という悲劇が彼という人間に与えた影響です。これにより、シェイクスピアは崇拝すべき偶像ではなく、私たちと同じように苦しむ一人の人間として描かれます。同様に、ケネス・ブラナー監督・主演の『シェイクスピアの庭』(2018年)も、晩年のシェイクスピアが故郷に戻り、息子の死の記憶と向き合う姿を繊細に描き出しており、『ハムネット』と対をなす作品と見なすこともできるでしょう。

ロマンス、陰謀、そしてコメディ

シェイクスピア映画には、さまざまな解釈が存在します。アカデミー賞作品賞を受賞した『恋におちたシェイクスピア』(1998年)は、『ロミオとジュリエット』の執筆過程をロマンチックな創作物語として描きました。一方で、ローランド・エメリッヒ監督の『もうひとりのシェイクスピア』(2011年)は、彼の作品は別人が書いたという「オックスフォード派」の説を採用し、文学史を政治スリラーに変えました。この作品は、天才が無名の出自から現れることへの一部の人々の居心地の悪さを反映しているように見えます。さらに、コメディ映画『ビル・シェイクスピア』(2015年)は、シェイクスピアの「失われた年月」をドタバタ劇として描き、そもそもシェイクスピアに関する物語の多くが推測に基づいていることを逆手にとっています。