アップル、イタリアで罰金1億ドル超 ― 「不公平なプライバシー規則」が独占禁止法違反と判断
イタリア競争当局が、アップルのアプリ追跡透明性(ATT)ポリシーが第三者開発者に過大な負担を強いているとして、9800万ユーロ超の罰金を科しました。本件の背景と今後の影響を解説します。
イタリア当局、ATTポリシーに「待った」
イタリアの競争規制当局(AGCM)は2025年12月23日、アップルに対し、9800万ユーロ(約1億1600万ドル)を超える罰金を科したと発表しました。当局によると、アップルはアプリストアにおける市場での優越的地位を濫用し、同社のプライバシーポリシー「App Tracking Transparency(ATT)」を通じて、サードパーティ(第三者)開発者に不公平な条件を課したと指摘されています。
開発者を悩ませる「二重の同意要求」
今回の罰金の対象となったのは、アップルが2021年に導入した「ATT」ポリシーです。このポリシーは、サードパーティ開発者が他のアプリやウェブサイトを横断してユーザーデータを追跡(トラッキング)する際に、ユーザーから同意を得ることを義務付けています。しかしAGCMが問題視したのは、その手続きが「過度に煩雑」である点です。具体的には、開発者はユーザーに対し、トラッキング許可を求めるポップアップを2回表示する必要があります。
AGCMは、この二重の同意要求はプライバシー保護法が定める要件を超えた「不釣り合いな」規約だと判断しました。さらに、アップル自社のiOSネイティブアプリには同様の厳しい規則が適用されておらず、サードパーティ開発者だけが不利な立場に置かれていると結論付けています。
今回の罰金は、単なる一国の判断にとどまりません。これは、巨大テック企業が「ユーザー保護」を名目に構築した独自の経済圏(ウォールドガーデン)に対し、世界中の規制当局が公平な競争を求めて介入を強める大きな潮流の一部と見ることができます。今後、プラットフォームの運営ルールそのものが、独占禁止法上の争点となるケースはさらに増えていくでしょう。
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