HAONが頂点へ――「SMTM12」が問う、ラップの「本物」とは
Mnetのラップサバイバル「Show Me The Money 12」でHAONが優勝。ZicoとCrushのチームから生まれたチャンピオンは、K-ヒップホップの未来と「本物らしさ」をめぐる問いを改めて投げかけている。
「ラッパーはストリートから生まれる」――その神話は、まだ生きているのだろうか。
2026年4月2日、Mnetのラップサバイバル番組 Show Me The Money 12(以下SMTM12)が生放送のファイナルを迎え、HAON(ハオン)が今シーズンの優勝者として名前を呼ばれた。最終5名に残っていたのは Mason Home、MILLI、Tray B、NOW IM YOUNG、そして HAON。彼は Zico と Crush が率いるチームの代表として決勝を戦い抜いた。
ファイナルのステージには豪華なゲストも集結した。K-ヒップホップシーンを長年牽引してきた Jay Park、バラエティとラップの両フィールドで存在感を示す Lee Young Ji、そして今やK-POPの枠を超えたアイコンである Zico 本人も登場し、番組に重みを加えた。
SMTMとは何か――韓国ラップ界の「登竜門」
Show Me The Money シリーズは2012年に始まり、今回で12シーズン目を迎えた。単なるオーディション番組ではない。韓国のヒップホップ文化においてこの番組は、無名のラッパーが一夜にして全国区になれる、数少ないプラットフォームのひとつだ。過去の出演者には BewhY、Owen Ovadoz、pH-1 など、現在のK-ヒップホップシーンを代表するアーティストが名を連ねる。
HAON 自身は決して「新顔」ではない。本名キム・ハオン、Zico の実弟としても知られる彼は、すでにインディペンデントシーンで一定の評価を築いていた。その彼がSMTMという「競技の場」に降り立ったことは、番組開始前から話題を集めていた。
「兄の弟」というプレッシャー、そして証明
ここで一つの問いが浮かぶ。HAON の優勝は、実力の証明か、それとも「Zicoの弟」というブランドが後押しした結果か。
この問いは不公平かもしれないが、避けられない。Zico はK-POPとK-ヒップホップの双方で頂点に立つアーティストであり、プロデューサーとしての評価も高い。その弟がZicoのチームに所属し、優勝したという事実は、どうしても「血縁フィルター」を通して見られてしまう。
しかし番組のフォーマット自体が、この疑念に一定の答えを与えている。SMTMはライブパフォーマンスと審査員・視聴者投票の組み合わせで勝者を決める。スタジオの外、生放送のステージで実力を見せなければ勝ち残れない構造だ。HAON がそのプレッシャーの中で頂点に立ったという事実は、単純に無視できない。
グローバルファンにとっての意味
SMTMはNetflixや各種ストリーミングプラットフォームを通じて、日本を含む海外でも視聴されている。日本のK-ヒップホップファンにとって、この番組は「韓国語ラップの学校」とも言える存在だ。スラング、フロウ、韓国ヒップホップ特有のリリックの構造――これらを字幕付きで体験できる機会は限られており、SMTMはその貴重な窓口となっている。
HAON の音楽スタイルは、重厚なリリックと繊細なメロディラインを組み合わせた独自のものだ。日本のリスナーが親しむシンガーソングライター的な感性とも共鳴しやすく、今後の日本市場での展開が注目される。
実際、Zico はすでに日本でも一定のファン層を持ち、コラボレーションやライブ活動を通じて存在感を示してきた。HAON の優勝が、その流れをさらに加速させる可能性は十分にある。
K-ヒップホップ産業の「今」
K-POPが世界市場で確固たる地位を築く一方、K-ヒップホップはより「ニッチ」な領域に留まっているように見える。しかし数字は別の物語を語る。Zico の「SPOT!」(feat. JENNIE)は2024年に韓国国内外で記録的なストリーミング数を叩き出し、ヒップホップとアイドルポップの境界線が溶けつつあることを示した。
SMTMはその「境界の溶解」を象徴する場でもある。純粋なアンダーグラウンドラッパーと、アイドル的な背景を持つアーティストが同じステージで競う。この混在こそが、番組の魅力であり、批判の的でもある。
記者
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