ベトナムが半導体製造に参入、米中対立の新たな受益者となるか
トランプ政権がベトナムを技術輸出規制リストから除外すると発表。ベトナムは半導体組み立てから製造へと転換を図る中、日本企業にとって新たなパートナーシップの機会となるか。
2月20日、ベトナムの最高指導者ト・ラム氏がワシントンでトランプ大統領と会談し、同国を戦略的輸出規制リストから除外するという約束を取り付けた。その5週間前、ラム氏はハノイで行われたベトナム初の国産半導体製造工場の起工式に出席していた。この絶妙なタイミングは偶然ではない。
冷戦時代の制約からの解放
ベトナムは冷戦時代から、中国、ロシア、北朝鮮とともに米国の戦略的輸出規制リストに名を連ねてきた。この除外により、同国は半導体の組み立て・パッケージングを超えて、実際の製造に進出する道筋が開かれる。
「半導体サプライチェーンにとって、この決定はベトナムがバックエンドの組み立て拠点から上流の製造・設計パートナーへと転換することを意味します」と、ワシントンの戦略国際問題研究所のスジャイ・シバクマール氏は説明する。
国営企業ベトテルが運営する製造工場は、2027年後半に試験生産を開始し、32ナノメートルチップの製造を目指している。これは自動車、通信ネットワーク、産業機器に使用される種類のチップだ。最先端の2〜3ナノメートルチップを追うのではなく、ベトナムは着実に産業基盤を構築する戦略を選んだ。
日本企業への新たな機会
現在、インテル、サムスン、クアルコム、アムコア、マーベルといった大手半導体企業がすでにベトナムに進出している。クアルコムは同国に世界で3番目に大きな研究センターを開設し、アムコアは16億ドルを投じて同社最大のパッケージング工場を建設した。
アナリストは、ベトナムの世界半導体パッケージング市場における シェアが2022年の1%から2032年には9%近くまで上昇すると予測している。
この動きは日本企業にとって重要な意味を持つ。ソニーの半導体事業やルネサスなどの日本企業は、中国への過度な依存を減らしつつ、アジア地域での製造基盤を多様化する新たな選択肢を得ることになる。特に自動車産業向けの半導体において、ベトナムは魅力的なパートナーとなり得る。
人材育成という課題
ベトナム政府は現在7,000人の半導体エンジニアを2030年までに50,000人に増やすという野心的な目標を掲げている。この人材育成は、日本の技術系大学や企業にとって協力の機会を提供する。
1月15日、ファム・ミン・チン首相はASMLのエドゥアルド・スティフート上級副社長と会談し、2日後には財務大臣が同じASML代表団と研修センターや公式な企業進出について協議した。米国がオランダに対して最先端装置の中国向け販売停止を圧力をかける中、この会談は意味深いシグナルだった。
地政学的なバランス感覚
「この動きは、ワシントンがベトナムを中国に対するインド太平洋地域の重要な対抗勢力として位置づける努力を反映している」とシバクマール氏は指摘する。
米国にとってベトナムは中国の代替手段の構築であり、ベトナムにとっては世界で最も価値の高い産業での地位確保を意味する。ワシントンと北京の間で板挟みになっているすべての国が、今やハノイの動きを研究し、自国でも同様の戦略を模索している。
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