中央アジアの鉱物争奪戦:日本が見落としているリスク
中央アジアの重要鉱物をめぐる米中露の覇権争いが激化。カザフスタンだけで46兆ドル相当の埋蔵量を誇るこの地域で、日本企業とサプライチェーンに何が起きているのか。
トヨタのEVバッテリーに使われるリチウム、ソニーのカメラセンサーに欠かせないゲルマニウム、そして日本の防衛産業が必要とするチタン——これらの原材料の争奪戦が、遠く離れた中央アジアの草原と山岳地帯で静かに、しかし急速に進んでいます。
46兆ドルの「眠れる宝庫」で何が起きているのか
カザフスタンは、世界銀行の試算で46兆ドル相当、5,000か所の鉱物埋蔵地を持つ国です。2025年には世界のウラン生産量の40%以上を供給し、2009年以来、世界最大のウラン生産国の地位を維持しています。さらに2025年4月、カラガンダ地方でネオジム・セリウム・ランタン・イットリウムを含む希土類元素の新鉱床が発見され、埋蔵量は最大2,000万トンに上る可能性があると発表されました。もし確認されれば、カザフスタンは世界第3位の重要鉱物産出国となります。
ウズベキスタンはタングステン・銅・リチウム・ガリウム・ゲルマニウムなど多様な鉱物を保有し、2025年3月には26億ドル規模の鉱物開発計画を発表しました。タジキスタンは世界のアンチモン生産量の4分の1を占める第2位の産出国で、バッテリー技術や防衛分野での需要が高まっています。
この地域全体では、米国政府が指定する60種類の重要鉱物のうち、少なくとも32種類が産出されています。年間の重要鉱物輸出総額は150億ドル超に達します。
中国とロシアが先行し、米国は2.1%にとどまる
問題は、この巨大な資源をめぐる競争で誰が主導権を握っているかです。シンクタンク「オクサス・ソサエティ」の調査によれば、中央アジアの重要鉱物輸出に占める割合は、中国が49%、ロシアが約20%。一方、米国はわずか2.1%にとどまっています。
中国の優位性は数字以上に構造的です。中国はキルギスタンやタジキスタンで採掘許可の過半数を保有し、採掘した鉱石を中国国内で精製・加工するサプライチェーンを構築しています。グローバルに見ても、中国は採掘の70%、精製・加工の87%を支配しています。中央アジアは「原料を輸出し、付加価値は中国で生まれる」という構造に組み込まれているのです。
ロシアもまた、ロスアトム(国営原子力企業)を通じてカザフスタンの主要鉱山の権益を握り、ウラン濃縮能力では世界の約50%を掌握しています。カザフスタン産のクロムはほぼ全量がロシアに輸出され、航空機・ミサイル・装甲車両の素材として使われています。
日本企業は「他人事」でいられるか
日本がこの問題に無関心でいられない理由は明確です。
トヨタ・ホンダ・日産が推進するEVシフトには、リチウム・ニッケル・コバルト・ネオジムが不可欠です。ソニーやパナソニックの電子部品製造には、ゲルマニウムやガリウムが必要です。日本の防衛産業が注目するチタン・ベリリウムも、カザフスタンに豊富に存在します。これらの多くは現在、中国を経由して調達されています。
日本はすでにレアアース問題で痛い経験をしています。2010年、中国が尖閣諸島問題をめぐってレアアースの対日輸出を事実上停止したとき、日本の製造業は代替調達先を必死に探しました。あの教訓が、今の中央アジアをめぐる動きにどう活かされているかは、問い直す価値があります。
日本政府はJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じて資源外交を展開してきましたが、中央アジアへの存在感は限定的です。カナダのカメコ社がカザフスタンのウラン採掘で大きな権益を持ち、トルコが中央アジア鉱物輸出の11%を占めているのと対照的です。
米国は2025年11月にトランプ大統領が中央アジア5か国の首脳をホワイトハウスに招き、2026年2月には重要鉱物サミットを開催するなど、外交的な動きを加速させています。カリフォルニア拠点のコーブ・キャピタルは米政府の支援のもと、カザフスタンのタングステン鉱山開発に11億ドルの契約を締結しました(ただし融資はまだ確定していません)。
「川上」を押さえた者が次世代技術を制する
AIデータセンターの冷却システム、次世代半導体、風力発電のタービン、電気自動車のモーター——これらすべてに、中央アジアの鉱物が必要です。「川上」の採掘・精製を誰が握るかが、次世代産業の競争力を左右します。
カザフスタンは投資環境の整備にも動いています。地下資源法を改正し、100項目以上の変更を加え、電子オークションや透明性の向上を図っています。中央アジア諸国自身も、中国・ロシア依存からの多角化を模索する動きがあります。
しかし構造的な変化には時間がかかります。精製・加工インフラの構築、物流ネットワークの整備、政治的リスクの管理——これらは一朝一夕に解決できる問題ではありません。
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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