数学の天才が語るAI:「ヘリコプターで山頂へ」の功罪
世界最高の数学者テレンス・タオが語るAIの可能性と限界。エルデシュ問題の解決から見える、数学研究の新たな地平とは。
1,000を超える未解決問題。20世紀最高の数学者の一人、ハンガリーのポール・エルデシュが残した「エルデシュ問題」の中で、AIが次々と解答を導き出している。
ChatGPTをはじめとする生成AIが、これまで人類が解けなかった数学問題を解決していると複数の研究者が報告。OpenAIのグレッグ・ブロックマン社長は1月、「GPT-5.2 Proがまた別のエルデシュ問題を解決した。数学と科学の進歩にとって激動の年になる」とXに投稿した。
世界最高の数学者が見るAIの実力
これらのAI生成証明の妥当性を判断したのは、現存する世界最高の数学者とされるUCLAのテレンス・タオ教授だ。彼の承認は、生成AIが人類の知識と文明の最前線を押し広げるという最大の約束を正当化するかに見えた。
しかし、タオ教授本人の評価はより慎重だった。「AIは機能的に『安い勝利』を手に入れている」と彼は表現する。AIが解決したのは、エルデシュ問題の中でも比較的易しい問題群。専門家が半日かければ解けるレベルのものだという。
2024年秋の最初のインタビューで、タオ教授はチャットボットを「平凡だが、完全に無能ではない大学院生」に例えていた。6か月後、彼はAIが「特定の高レベル数学推論」で改善したが、創造性に欠け、微妙な間違いを犯すと評価。そして最新の会話では、より楽観的な見方を示している。
ヘリコプターで山頂へ:失われる「旅の価値」
「これらの問題は、ハイキングで目指す遠い場所のようなものです」とタオ教授は説明する。「過去には、旅をしなければならなかった。道標を置いて他の人が辿れるようにし、地図を作ることができた」
「AIツールは、現地にヘリコプターで送り届けるようなもの。旅そのものの恩恵をすべて見逃してしまう。目的地に直行するだけで、実際にはそれは問題を解くことの価値の一部でしかなかった」
この比喩は、日本の研究文化にも深く響く。日本の学術界では、結果だけでなく過程を重視する「道」の思想が根付いている。茶道、武道と同様、数学研究においても「型」を学び、段階的に習得する過程が重要視されてきた。
数学研究のパラダイムシフト
しかし、タオ教授はAIの可能性も認めている。「数学者は今後、より大規模に数学を行うようになるでしょう」と彼は予測する。
18世紀の稀な疾患研究が一人の患者の症例研究だったのに対し、21世紀では1,000人を対象とした臨床試験が可能になったように、数学も「症例研究レベル」から「人口調査レベル」へと発展する可能性がある。
日本の製造業が得意とする「カイゼン」の思想とも通じる部分がある。AIが単調な計算作業を担うことで、人間の数学者はより創造的で戦略的な思考に集中できる。トヨタの生産システムが人間と機械の最適な協働を追求してきたように、数学研究でも人間とAIの新しい協働モデルが生まれつつある。
信頼できる「共著者」への道
2023年、タオ教授は2026年までにAIが「信頼できる共著者」レベルに達すると予測していた。「その予測はほぼ正確でした。現在、AIは私が後輩の人間の共著者に期待するのと同等の貢献をしています。特に、面倒な作業や多くの退屈なケースの検討を喜んで行う後輩の貢献と同レベルです」
ただし、課題も残る。AIは自身の答えに対する信頼度を適切に示さない。「人間なら、何かに確信があるかないかを示すのは非常に重要な情報です。不確実なことを暫定的に提案するのは構いませんが、不確実性にフラグを立てることが重要。AIツールは自分の信頼度を正確に評価しません」
本コンテンツはAIが原文記事を基に要約・分析したものです。正確性に努めていますが、誤りがある可能性があります。原文の確認をお勧めします。
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