スクリーンタイム19時間——「減らすべき」に反論する人たち
1日19時間スマホを使い続ける人々「スクリーンマクサー」の実態。スクリーンタイム削減の常識に疑問を呈する声から、デジタル依存の本質を考える。
1日19時間、画面を見続けることは「問題」なのか。
フロリダ州オーランドで校正編集者として働くモーガン・ドレイスさんは、重度のADHDを抱えており、「常に3つのことを同時にやっていないと落ち着かない」と言います。その結果、1日の平均スクリーンタイムは18時間55分。図書館アプリで本を読みながら、110時間のプレイで35ドルが稼げるモバイルゲームを並行して動かし続けています。オートロックはオフ。眠るまで画面から目を離しません。
これを聞いて「それは問題だ」と感じた方、少し立ち止まって考えてみてください。その判断の根拠は、本当に確かなものでしょうか。
「スクリーンタイムを減らせ」という時代の空気
ここ数年、スクリーンタイムをめぐる議論は急速に高まっています。青少年のメンタルヘルスへの影響を懸念する研究が相次ぎ、米国ではMetaやYouTubeがプラットフォームの依存性設計について法的責任を問われる陪審評決も出ました。スマートフォンを手放す「デジタルデトックス」は一種のライフスタイルブランドとなり、通知ゼロの山奥リトリートには予約が殺到しています。
社会の「常識」は明確です。スクリーンタイムは少ないほど良い、と。
しかし、その常識に真正面から異を唱える人々がいます。WIRED誌が取材した彼らを、記事では「スクリーンマクサー(screenmaxxers)」と呼んでいます。
画面は「孤立」の解決策だった
カナダ・オンタリオ州の森林地帯に住むコリナ・ディアスさん(45歳)は、ビデオゲームのマーケティングとインフルエンサー管理を手がけています。最寄りの大都市トロントまで車で2時間半。彼女にとってスクリーンは「つながりの命綱」です。
「1990年代からIRCや掲示板で友人を作ってきた。画面は、主流では可視化されにくいニッチなコミュニティと私をつないでくれるものだった」と彼女は言います。
南米に暮らすプログラマーのダニエル・リオスさんも同様です。海外生活を経て故郷に戻ったものの、友人のほとんどが移住して戻ってきませんでした。今ではDiscordが主要な社交の場。「スクリーンを切ることは、家で退屈することを意味する」と彼は言います。
サンフランシスコ湾岸でUXデザイナーとして働くブルック・ウィリアムズさんの平均スクリーンタイムは18時間58分。強迫性障害(OCD)を抱える彼女にとって、SNSの「常時監視」は不安をコントロールする手段でもあります。「知れる限りのことを知っていれば、コントロール感が持てる」と彼女は語ります。
「スクリーンは悪者にされすぎている」
スクリーンマクサーたちが共通して主張するのは、問題の所在についてです。
ディアスさんは「スクリーンタイムは、社会的孤立や過労、依存症といったより大きな問題の周辺的な話題に過ぎない」と指摘します。スクリーンはあくまで「媒体」であり、規制すべきはその中身であって、使用時間ではないと言います。
ドレイスさんはさらに踏み込んで、スクリーンタイムへの警告を「モラルパニック」と呼びます。「スクリーンタイムの悪影響として挙げられるものは、すべて別の社会問題が便利な悪者に押し付けられているだけだ」という主張は、挑発的に聞こえますが、一定の論拠を持っています。
実際、研究者の間でもSNSへの「臨床的依存」が成立するかどうかは、いまだ激しく議論されています。
日本社会から見えること
この議論は、日本にとっても他人事ではありません。
日本は世界有数のスマートフォン普及率を誇り、電車内でも食卓でも画面を見続ける光景は日常です。一方で、孤独・孤立対策担当大臣が設置されるほど、社会的孤立が深刻な課題となっています。
ここに逆説があります。スクリーンタイムを減らすことが「正解」なら、すでに社会的なつながりが希薄な人々から、数少ないコミュニケーション手段を奪うことにならないでしょうか。リモートワークが定着し、地方移住が増えた今、画面は「孤独の原因」ではなく「孤独への処方箋」として機能している側面もあります。
また、日本の高齢化社会において、高齢者のデジタル活用は医療・行政サービスへのアクセスに直結します。「スクリーンを減らせ」という一律のメッセージが、誰に向けられたものなのかを問い直す必要があるかもしれません。
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