ロボットIPOから半導体ジレンマまで：アジア経済の交錯するシグナル（12月第5週）

アマゾンに家庭用ロボットを納入する中国企業が香港で2億1,000万ドルを調達したが、株価は微動だにしなかった。同じ週、韓国の半導体工場はフル稼働なのに百貨店はガラガラ。日本の首相は28年ぶりの財政黒字を約束し、カリフォルニアでは億万長者たちが税金爆弾を避けて脱出準備中だ。2025年最後の週、グローバル経済はバラバラの方向を指す羅針盤の集合体だった。

TOP 6 ストーリー

1. OneRobotics、香港IPOで2億ドル調達—市場は冷淡

アマゾンに家庭用ロボットを供給する中国企業OneRoboticsが香港市場に上場し、16億4,000万香港ドル（約2億1,000万ドル）を調達した。しかし上場初日の株価は公募価格から動かなかった。投資家は2026年発売予定のヒューマノイドロボットの収益性を確認するまで様子見の構えだ。ロボット産業への期待と実績検証のギャップがそのまま表れた。

2. 韓国11月産業生産：半導体は好調、消費は急落

韓国の11月産業生産が半導体好況を背景に前月比0.9%増加した。しかし同期間の小売売上高は3.3%急落し、21ヶ月ぶりの最大下落幅を記録。AI半導体需要が輸出を牽引する一方、内需経済は急速に冷え込んでいる。サムスン電子とSKハイニックスが支える「半導体韓国」と財布を閉じた消費者の「実体韓国」の乖離が広がっている。

3. JX金属、AIデータセンター素材を3度目の増産—米国進出も検討

日本のJX金属がAIデータセンター向け光通信素材の生産を3度目の拡大に踏み切る。核心はリン化インジウム（InP）ウェハーで、高速光通信の必須部品だ。同社は米アリゾナ州への生産施設移転も検討中。米中対立の中、日本素材企業が「チャイナリスク」ヘッジと米国市場攻略を同時に狙う戦略的動きと読める。

4. 日本2026年度予算案：28年ぶりの黒字目標、実現可能性は？

高市早苗首相が2026年度予算案で1998年以来初めて基礎的財政収支の黒字を目標に掲げた。しかし日銀の利上げ基調の中、国債利払い負担が急増しており、目標達成に懐疑的な見方が多い。高齢化で社会保障費は増え、防衛費増額圧力も強い。「黒字予算」が政治的レトリックに終わる可能性も排除できない。

5. ノボノルディスク、中国でWegovy価格引き下げ—肥満治療薬戦争激化

デンマーク製薬大手ノボノルディスクが肥満治療薬Wegovyの中国販売価格を大幅に引き下げた。200億ドル規模と推定される中国肥満治療薬市場で、イーライリリーや中国ローカル企業の追撃を振り切る戦略だ。GLP-1系薬剤は単なるダイエットを超え、心血管疾患予防効果まで認められ「ブロックバスター」の地位を固めている。

6. カリフォルニア億万長者税：シリコンバレーvs民主党の正面衝突

カリフォルニア州議会が2026年施行を目指し、未実現キャピタルゲインに5%課税する「億万長者税」法案を推進中だ。これを支持するロー・カンナ下院議員に対し、シリコンバレーのVCが政治資金撤回とリコール運動で対抗している。スタートアップ生態系の資本流出を懸念する声と、極端な富の不平等を是正すべきという主張がぶつかる米国政治の断面だ。

今週のトレンド：輸出は堅調、内需は揺らぐ

今週の経済ニュースの共通項は「外は強く、内は弱い」という点だ。韓国の半導体輸出はAIブームに乗って好況だが、国内消費は凍りついた。日本企業は海外M&Aや米国進出で成長エンジンを探す一方、内需経済は低成長の沼から抜け出せずにいる。中国ロボット企業の香港上場もグローバル資本を狙ったもので、中国内需市場の活力を反映したものではない。

政策面でもジレンマが鮮明だ。日本は財政健全化を叫ぶが、金利上昇で国債利払い負担が急増するジレンマに陥った。カリフォルニアは富裕層増税で格差を解消しようとして資本流出リスクを抱えることになった。簡単な解決策はない。